2019/10/1

英語学習に楽な道はない。最短距離があるだけだ

NewsPicks NewsPicks編集部
今、日本には英会話スクールがあふれている。ネットやアプリを活用したオンライン英会話も隆盛だ。しかし、2018年のTOEIC(R)の国別平均の日本のスコアは520点、49カ国中44位と、決して誇れるものではない。実際、過去に英語学習に挫折した経験を持つ人も多いだろう。
「英語学習に楽な道はありません」と語るのは、英語コーチングサービス「プログリット」を運営する、代表の岡田祥吾氏だ。1日3時間✕3か月という骨太な英語学習メソッドは、どのようにして実現されるのか。「人✕テクノロジー」で成り立つ、ビジネス英語学習最後の砦=「プログリット」とは。

英語学習に挫折した人こそ選ぶプログリットとは

──「プログリット」のサービス開始から約3年で、飛躍的に利用者が増えています。どんな理由があると思いますか。
 東京オリンピックの影響もあると思いますが、なにより大きいのは社会情勢の変化。私だけでなくみなさんも、SNSの普及やブロックチェーン台頭など、国境に囚われない世界の広がりを感じているのではないでしょうか。
 その感覚はビジネスパーソンとなればなおさらで、今後も国内だけで商売をしていこうという一部上場企業はほとんどない。楽天等で英語が社内公用語になったり、昇進の条件に英語力が求められたりするケースも増えてきました。
 社会の変化に加えて、仕事でも英語の必要性を感じたビジネスパーソン、特に英語学習で過去に挫折した方が、「今度こそビジネスで通用する英語力を身につけたい」と、プログリットを選択しています。
2022年5月時点の累計受講者数は13000名。
──とはいえ、英語学習の挫折経験はまわりでもよく耳にします。プログリットは何が「違う」のでしょう。
 端的に言えば、私たちは英語そのものを教えるのではなく、独学で学ぶ方法を教え、継続をサポートします。
 そもそも、多くの日本人の根底には、英語に対する苦手意識があります。それゆえに英会話スクールは、グループレッスン、マンツーマンレッスンと進化しながら増え続け、今は英語学習アプリやオンライン英会話サイトが隆盛ですね。参考書なども星の数ほど出版されています。
 そういった意味で、英語学習の環境はかなり整備されているのです。
 しかし、あまりに充実しているために、多くの人は今の自分に最も必要な学習方法や教材を見つけ出すことができず、トライしては挫折してきました。最適な学習の道筋を示すことで、こういったジレンマを解消し、効果的に英語力を上げるのがプログリットの英語コーチングです。
 このジレンマはどんな英語レベルの人にも共通するので、プログリットには初心者からTOEIC900点以上の上級者まで、さまざまなユーザーが通っています。

「英語力の伸び」=「学習生産性」✕「投下時間」

──プログリットの英語コーチングについて、具体的に教えてください。
 私たちは、「英語力の伸び」=「学習生産性」✕「投下時間」と定義しています。つまり、英語力を上げるには、効率のよい方法で、長時間勉強するしかない。週に1回レッスンを受けるだけで、自動的に英語が話せるようになったりはしないんですよ。
 これを基本として、プログリットのコンサルタントが、良質なコンテンツ(学習教材やメソッド)のなかから、その人に合ったものを選びます。
 筋トレをするとき、その人の体力やなりたい体に合わせて、Aさんは10キロのダンベルを100回、Bさんはベンチプレス……といったように、道具やトレーニング方法を使い分けるのと同じです。
 今は、第二言語習得論や応用言語学など、言葉の構造や脳が言葉を覚えるメカニズムの研究がかなり進んでいますから、そういった科学的な根拠のあるデータドリブンな分析をすることで、その人にとって最も効率的な学習が見えてきます。
 次に、学習を継続させるのですが、忙しいビジネスパーソンにはこれが難しい。そこで、プログリットでは1日3時間✕3カ月の短期集中トレーニング方式を導入しています。
 もちろん、英語学習は3カ月より1年、時間も3時間より5時間のほうが効果は高い。しかし、1日3時間の学習時間を1年も確保しなくてはいけないとなると、挑戦する前から「無理だ」と感じる人が多いのではないでしょうか。
 また、英語学習は右肩あがりに成果が現れるものではありません。成果がわからないほどゆっくりと階段を上る時期があり、その後、踊り場のような時期が現れる。そこで頑張るとまた英語力が伸びていきます。
 最初の1〜2カ月は辛いのですが、コンサルタントのサポートがあれば乗り切れる。そして、3カ月目の達成感を知ることで、それ以降は身についた習慣で自習できるようになる。挫折リスクとの検証の結果、1日3時間✕3カ月にたどり着きました。

なぜ本田圭佑が毎日英語学習のための時間を作れるのか

──継続はもちろんですが、そもそも1日3時間という時間を捻出することが難しそうです。コンサルタントの存在がどう「効いてくる」のでしょうか。
 英語だけでなく、日々のスケジュールの見直しまで行うのがプログリットの特徴です。
 まずは典型的な一週間の予定を公私にかかわらずすべて書き出し、「1日3時間の学習をするためには、何時に起きる必要があるのか」「適切な睡眠時間は何時間か」「そうすると何時に寝る必要があるのか」といったように逆算志向で一緒に考え、優先度の低い予定や無駄な時間をあぶり出していきます。
 「この飲み会は必要ですか」「この会議はあなたが参加しないと成立しませんか」と聞いていくと、どんな人でも毎日3時間程度は捻出できます。
 プログリットのユーザーには多忙な経営層の方も多いのですが、あの本田圭佑選手も400日以上(2019年10月時点)プログリットを継続していると聞けば、納得してもらえると思います。
 そして、伴走力。といっても、プログリットはホスピタリティサービスではありません。私はもともと、マッキンゼーでコンサルタントをしていました。
 そのときに学んだのは、コンサルタントは「クライアントは何をしたいか」ではなく「クライアントは何をすべきか」を提案すべきだということです。プログリットでもそれを継承し、厳しくてもユーザーが今本当にやるべきことを指摘するようにしています。
 また、プログリットでは、チャットツールを使った毎日の進捗確認と、週に1度の面談を行っています。
 いつ、どこで、何を、どれだけやるのかという週間スケジュールを分刻みで共有し、「これから電車に乗るので単語を始めます」「終わりました」といった進捗をリアルタイムで確認。予定どおりにいかなければその理由を話し合います。
コンサルタントとのやり取りの一例。的確なフィードバックにより精度の高い自習が可能になる"
 この予実管理の部分に、今後はアプリも活用していく予定です。多くの英語学習アプリは「実績管理」を目的にしていますが、私たちは「予実管理」を重視します。
 つまり、水曜日に3時間勉強したことを記録しても意味がない。目標が2時間だったのか、それとも4時間だったのかによって、3時間の意味が変わるからです。
 これは、経営で「売り上げが10億円だった」という数字自体に意味がないのと同じですね。10億円が目標だった場合は「目標達成」ですが、15億円が目標だった場合、「未達」の状態です。それによって、来期以降の動きも経営方針も変わりますよね。
 プログリットはそれを1日単位で行うことで、短期間で着実に目標が達成できるのです。

「人✕テクノロジー」で英語学習は進化する

──テクノロジーによってプログリットの英語学習も進化しているのですね。
 科学的根拠のある、テクノロジードリブンな英語学習コーチングによって、これまで以上の効率アップを目指していきます。
 ただし、テクノロジーだけで英語力を上げることはできません。プログリットのサービスは、あくまで「人✕テクノロジー」で成り立っています。
 人の役割は2つあります。ひとつは選択肢の中から意思決定をすること。
 たとえばAIは、データに基づいてあるユーザーに合った学習コンテンツを、A〜Eの順に挙げることができます。この場合、データ的に最適なのはAかもしれませんが、コンサルタントはユーザーの強みや弱み、性格までを加味して、「そのユーザーに」やる気を持って学習に取り組んでもらうために最適な学習コンテンツを選ぶことができます。
 もうひとつの役割は、目的を伝えて人を動かすこと。
 学習を続けるにはモチベーションが重要ですが、それを維持するのが難しい。そんなとき、「この人が後押ししてくれるから頑張ろう」と思えるサポートがあるのはとても強い。いくらAIが進化しても、人の心を動かすことはできません。
──科学的根拠と、人にしかできない、時には厳しい指摘も含むサポート。プログリットが、企業とコンサルタントとの関係のような本質的なサービスだからこそ、多くのビジネスパーソンから選ばれるのかもしれませんね。
 繰り返しになりますが、科学的な裏付けのある効率的な学習方法を毎日一定量実践する。これ以外に英語を上達させる方法はありません。
 「聞くだけで英語が話せる」「1日10分の英語学習」などの魅力的なキャッチコピーをよく耳にしますが、それだけではなかなか英語が話せるようにならない。シビアなビジネスの世界に身を置くみなさんは、そのことが嗅覚でわかるのだと思います。
 英語の重要性は高まっていますが、それでもまだ多くの日本人は英語が苦手です。本来活躍できる能力があるのに、英語が話せないだけで機会を逃すのも、「自分は英語ができないし」と消極的になるのももったいない。
 もともと英語が苦手だった人が、英語が話せるようになったことで人生の選択肢が広がった事例は本当にたくさんあります。
 こういった思いを実現すべく、プログリットは「世界で自由に活躍できる人を増やす」という新しいミッションを設定しました。世界で自由に活躍するためのHowとして、これからも英語力を高めるお手伝いをしていきたいと思っています。