【食の未来】食品ロスをなくす「循環フードエコノミー」計画

2019/9/29

シカゴの生きた食品ラボ

巨大な鉄製シリンダーが「ザ・プラント」の外で午後の太陽を浴びて輝いている。ザ・プラントとは、シカゴにある面積8700平方メートルの「生きた食品ラボ」だ。
スペースシャトルのような巨大シリンダーは、嫌気性消化装置である。
サステナブルな都市開発企業「バブリー・ダイナミクス」は9年前、ここにあった元精肉工場を、地元フードビジネスの拠点に変えた。この嫌気性消化装置が完成すれば、食品廃棄物を堆肥やバイオガス、そして藻を育てられる栄養豊富な液体に変換できるようになるという。
この装置は、バブリー・ダイナミクスが目指す「循環経済」の実現を後押しすると期待されている。急増する都市人口に、地元で採れた有機食品を提供することにより、気候変動に負けない循環経済モデルを作ることができるのだ。
その閉じたシステムの中では、廃棄物はゼロに等しい。全ての素材は再利用され、共有され、修繕されるからだ。
国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)によれば、世界の温室効果ガス排出量の21~37%は、化学物質や石油燃料に依存して食料の生産・運搬を行う、現状の直線型の生産モデルによるものだという。
循環型モデルを支持する人々は、食料生産におけるさまざまなステークホルダーが協力し合えば、エネルギー消費や廃棄物の量を大幅に削減できると考えている。
巨大シリンダーが目を引く「ザ・プラント」(Joshua Lott for The New York Times)

地方経済への恩恵にも期待