【正念場】寝具界の革命児・キャスパーが打ち出す「次の一手」

2019/9/24

「寝不足」創業者の憂うつ

ニール・パレクは、このところあまり寝ていない。そのことは彼の顔にも表れている。
マットレスの直販で知られる「キャスパー」の共同創業者であるパレクは、ある日の午後遅く、マンハッタン・ミッドタウンのカフェでメニューをにらみながら、もう1杯カプチーノを頼むには時間が遅すぎるだろうかと葛藤していた。
「今週はずっとボロボロだよ。57か59のときもあった」とパレクはため息をつく。彼が話題にしているのは、「オーラ(Oura)」という銀色の指輪がはじき出した数値のことだ。パレクの右手薬指にはまっているこのデバイスは、レム睡眠の時間や心拍数といった情報を読み取って、「体調」を100点満点で判定してくれる。
パレクの隣に立っているのは、睡眠の専門家であるフランク・リップマン医師だ。リップマンはこの1年半、パレクの診察を行っている。
「それはマズいな」とリップマンは眉をひそめた。「夜遅くまでレイチェル・マドウ(アメリカの人気キャスター)の番組を見たりしない限り、私は80台後半をキープしているよ」
パレクは結局、デカフェを注文することにした。キャスパーの最高幹部であり、同社の高級マットレス「ウェーブ」を自宅に置いている身としては、げっそりとやつれた姿で不眠を訴えたりするのは、いかにも外聞が悪い。
もっとも、キャスパー社はこのところひそかに、フォーム素材のマットレスを売るだけではビジネスに限界があることを認めるようになった。いまや、同社はより大きなマーケットを狙って、「睡眠」そのものを売ろうとしている。
(写真:キャスパー提供)

睡眠業界に「勝者」はまだいない