「若返りの薬」の実現につながるか? 人間のエピジェネティック時計を“巻き戻せる”という研究結果
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注目のコメント
何を持って"巻き戻せる"と表現しているか、なにやら本当の年齢?がわかりそうな響きのエピジェネティック時計(epigenetic clock)とはなにか?をコメントしたいと思います。
我々がいつも使う誕生日からの経過日数で算出する暦年齢(Chronological Age)とは別に、組織・細胞の老化の程度を測定する「生物学的年齢」という概念があります。体重計に乗って、体重や体脂肪率、骨格筋率から算出した基礎代謝量をつかって求めるような「体年齢」が一般的に想起されるかもしれませんが、こちらは技術的にも見ている現象が全く異なるものです。
エピジェネティック時計というのは、いわば細胞の年齢をDNAの化学修飾(メチル化)具合で推定するものです。2013年のSteve Horvath博士の論文で示されて以降、特定の遺伝子の箇所のDNAメチル化レベルと暦年齢には、健康な人において強い相関があることがわかってきました。そこから、現在は様々なDNA修飾箇所に注目した新しい計測方法が出てきています。費用はかかりますので一般の人が気軽に計測するようになるものではありませんが、より生物学的に意味を持った指標と言うことで、この様なものが存在していることを知っておくと面白いとおもいます。
iPS細胞やES細胞は、若く算出されますのでエピジェネティック時計の話は、個人的には興味がつきません。
【以下専門的】
今回の論文では4つのエピジェネティック時計の測り方で計測して差を示している論文です。今回の治験(成長ホルモン+糖尿病のお薬2種を1年間、9人、対照群なし)の処置をする前と後で、4種類の指標(実験では4種類のエピジェネティック時計)を計測して、そのスコアが若くなっていることから、タイトルのように表現されています。
対照群がないこと、薬の組み合わせで起こる作用が複雑のため、胸腺を若返らせたというのは結論として少し因果関係が言えないところがあるかなと思いました。とくにこの時計をはかったのは胸腺細胞直接ではなく血液中の単核球(PBMC)を測って間接的に考えています。とはいえMRIの画像で組織がおっきくなっていて、細胞の構成割合も変化しているというのは面白く、エピジェネティック時計が巻き戻るという現象の可能性を、現在有名な4つの測り方で示したのは初めての例ではないかと思います。この10年ですごく若くなったと言われます。
28歳のころは40代と言われたんですが。やはり命がけの学生生活から、ハナホジしていてもお金がもらえる「ビジネスパーソン」とやらになって、かなりストレスが減ったんでしょうね。