ノートパソコンを開けばどこでも仕事

デスクとは何か──。あなたはそんなことをまともに考えたことがあるだろうか。
その答えを、私は知っている。部屋の隅にある長方形のやつだ。しかし、その背後にはどんな概念が潜んでいるのだろうか。
たいていの人にとって、デスクは私物を保管する場所であり、ノートパソコンを使う場所、鍵をしまっておく場所だ。私は1日に何度か背中を伸ばしたいので、スタンディングデスクを使っている。
興味深いことに、1990年代後半から2000年生まれのZ世代は、体を伸ばす必要を感じない。そもそもデスクが好きではないし、欲しいとも必要だとも思っていない。彼らはほとんどノートパソコンを使わず、携帯電話を使うことが多いからだ。
ノートパソコンを使うときは、電源があるところならどこでもいい。いつも持ち歩いているパソコンを開いて、そこで作業を始める。
だから正直に言ってしまおう。多くのZ世代は、仕事の報告書を入力するために1日8時間デスクの前に座り続けたりはしない。彼らは思考のスピードが速く、何があっても対応できる。そして動きたがる（活動量計やスマートウォッチを腕につけて成長した世代だ）。
私は大学でZ世代の若者を指導することが多いが、彼らは間違いなく身軽でいることを好む。

働き方や共同作業の自由度を制限する

私が思うに、彼らはデスクを嫌っている。その理由を紹介しよう。
まず、デスクに対する好感度という点でみると、Z世代はゼロだ。デスクは働き方や互いの共同作業の自由度を制限する。つまり彼らの生産性を妨げる。
ほとんどのZ世代は、テレビゲームやネットフリックス、スマートフォンの混沌とした環境で育ったため、どんな場所であっても、周囲の雑音を無視して、仕事をすることに慣れている。それがイヤホンの存在理由だ。
デスクが欲しいかどうかという点も、彼らにはどうでもいい問題だ。「いいね」という言葉が、フェイスブックやインスタグラムでの投稿に対する好感など軽い好みを意味するとしたら、「欲しい」というのは根深い欲望であり、デスクに関していえば、「欲しい」と思うのは22歳以上の人間だけだ。
私は郊外で育ち、自分の部屋には自分のデスクがあった。何時間も独学で勉強した。Z世代は群れで動く。心の底に、誰かと一緒にやりたい、すぐにやりたいという強い気持ちがある。彼らはそういうふうにできている。
デスクやオフィスにこだわる人は、誰にとってもそれが一番いい方法だと考えがちだ。
私の同僚が最近指摘したように、共同作業用ワークスペースのアイデアは一時的にもてはやされたが、そのまま立ち消えた。気を散らすものが多すぎる環境になることに、誰もが気づいたからだ。

生まれた時からモバイル機器と育つ

誰もが一日中、広大なオープンルームに集う環境がいいと勧めているわけではない。ただし、一時利用できるワークスペースや長椅子のある休憩室、少人数向けの窓のない小さな部屋など、オフィスの生産性をあげるためのコンセプトは、大学を卒業して会社で働き始める若い労働者にとっては、はるかに役に立つ。
オフィスの多様性が創造性を刺激することは、しばらく前からわかっていた。私はむしろ、アップルとグーグルを混ぜたようなオフィスで働きたいと思っている。
おしゃれな家具、公園が見えるたくさんの窓、片隅に小さなオフィスがある──そんなスペースであれば、もっと働きやすい。そうはいっても、デスクはどうしても必要だ。自分のプライベートなスペースは欲しい。
「必要」という言葉はインパクトが強い。必死な精神状態や交渉を難航させるものを意味する。私がデスクを必要とするのは、自分のスペースを確保することが好きで、そうすると集中しやすいからだ。それは私にとって正常な状態だ。
Z世代には、私の「正常」は通用しない。彼らは台所のテーブルや学校でラップトップを使って育った。私たちの中には、大学を卒業するまでスマートフォンを持たず、使ったことがなかった人もいる（一方、Z世代はiPhoneで報告書を書きあげることができる！）。
彼らは生まれた時からモバイル機器とともに育った。彼らにとって、デスクはあまりにも制約が厳しく、まるで権威に服従させようとする何かのように感じられるのだ。彼らは生産性を高めるためにデスクを必要としない。そしてデスクというものが好きではないし、求めてもいない。
静かな職場はもちろん必要だ。気を散らすものがない環境で、近くにいいコーヒーマシンがあるなら絶対だ。イケアのワイヤレスパッド付きのテーブルも予想以上に好ましい。でも、デスクは願い下げだ。あてがわれるのは迷惑ぐらいにZ世代は思っている。
原文はこちら（英語）。
（執筆：John Brandon/Contributing editor, Inc.com、翻訳：栗原紀子、写真：Vladimir Sukhachev/iStock）
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This article was translated and edited by NewsPicks in conjunction with HP