オフィスに出勤せずに働く「リモートワーク」という選択肢は、今の時代に働く人々にとって、効率的であり理想の働き方だと捉えられている。
平均で毎日片道30分近くを通勤に費やすアメリカでは、労働人口の半分近くが、居心地の良い自宅や、地元のコーヒーショップ、近くのコワーキングスペースで働くリモートワークを行なっている。フレキシブルなリモートワーク制度を採用する会社側も、物理的なオフィススペースの管理に伴う間接費を減らせることで利益を得ている。
しかし、「どうやってリモートワークの従業員が同僚と協力体制を取るか」という課題にはどの会社もどの従業員も頭を悩ませている。
私が働くソフトウェア会社イグルー(Igloo)は先ごろ、2000人の従業員を対象に調査を行った。職場のデジタル化状況を評価し、レポートにまとめたのだ。それによると、リモートワーカーの3分の2以上が、オフィス勤務なら直面しないであろう問題を抱えていると述べた。「重要な会議に出られない」という課題を挙げた者は半分以上にのぼった。
どのような職場環境でも、情報の共有は重要だが、リモートワーカーにとっては特に重要になってくる。それでも、従業員の43%が、書類が見つからないとか、探すのに時間がかかるという理由で、同僚と書類を共有することを怠っている。
リモートワーカーにとっては、開放型オフィスにありがちな会話の多さや自由なデスクなど、気が散る要因は少ないかもしれない。しかし、情報共有の不自由さのような問題があるために、オフィスで働く同僚と同じようにリモートワーカーが成功するのは難しいようだ。
従業員が同僚とコミュニケーションを取り、協力しあえるよう、雇用主は最善のツールを用意する責任がある。だが、そのようなツールを効果的に使い、自分の声が確実に届くようにするのはリモートワーカーの責任だ。
自分が一番集中できる環境で働き、同僚や雇用主に働きを評価してもらうために、まず次に挙げる3つのステップを試してみよう。

1.自分が存在している(あるいは存在していない)ことを、常に知ってもらう

「去る者は日日に疎し」つまり「親しかった者も、遠く離れてしまうと、しだいに親しみが薄くなる」ということわざを、遠くから働くリモートワーカーに当てはめてはならないのだが、たいていは当てはまってしまう。
われわれの調査によると、リモートワーカーの56%が、リモートワークが理由となって、重要な情報を逃したことがあるという。また70%は、「自分が孤立している」と感じているという。
孤立しないためには、自分がどこにいるか、あるいは、少なくともいつオンラインでつながっているかを、確実に同僚に知らせよう。
例えば、急いで昼食を買いに行くときや、コーヒーを淹れに行くときなどは、使っているメッセージ・アプリのステータスを「退席中」にすれば、連絡がつかないという状況を避けられるし、「遅くなってすみません!」という不名誉な返信をなくすことができる。
リモートワーカーには、「会議室でちょっとだけ打ち合わせ」という贅沢はできないかもしれない。しかし、費用対効果が高くて使いやすいさまざまな会議ツールがあるので、どこにいるかに関係なく、簡単に、バーチャルで顔を合わせてミーティングができる。
Microsoft Teams、Googleハングアウト、Zoomミーティング、Slack、あるいは昔ながらの電話などを使って非公式に打ち合わせをしてもらえば、さまざまな場所にいる同僚と親しい関係を築くことができる。そうしておけば、どうしても何かの情報が必要なときに、役に立つだろう。

2.出社した時と同じような環境をつくる

ときにはベッドの中で仕事をしたいと思うことがあっても、それは、病気のときに取っておくべきだ。普段リラックスするはずの自宅でも、意識して仕事のための環境をつくることで、生産性を上げるきっかけとなる。
実際に、ベッドやリビングで仕事をすると、せっかくの安静する場所をストレスと結びつけてしまうという調査結果も存在している。1日の仕事が終わってタスクから離れたあとでも、仕事を忘れるのが難しくなる場合があるというのだ。
リモートワーカーは、適切なツールを備えた、「仕事をするためだけの」環境をつくることが重要だ。デスク、モニター、キーボード、オフィス用品などがあるスペースを部屋のちょっとしたスペースに整えれば、大きな効果を上げられるだろう。
仕事をする環境を整え、仕事にふさわしい服を着るだけでなく、その日のスケジュールを立てることも大切だ。オフィスと自宅の区別が難しいリモートワーカーが仕事と生活のバランスを保ち、燃え尽きてしまわないようにするために役に立つ。オフィスで働く人たちがよくやるように、コーヒーブレイクを取ったり、外にランチを食べに行ったりすれば、長期的には生産性アップにつながる。
そして、1日の仕事が終わってログオフし、仕事をするエリアから離れることで、ホームオフィスに仕事を置いていき、家でくつろぐことができるのだ。

3.自分の声を聞いてもらう

リモートワーカーは実際にはオフィスにいないため、意見をしっかり述べることが極めて重要だ。すべての会話で主導権を取る必要はないが、少なくとも、ミーティング中にミュートボタンを使うのは避け、有意義な議論に貢献する方法を探そう。
これには、従業員としての自分の価値を上げる以上の意味がある。アリゾナ大学の心理学者マティアス・メールが中心となって実施した研究では、1日を通してかなりの会話をする人は、主に短い会話しかしない人より、概して幸福感が強いことがわかっている。
さらにリモートワーカーは、キャリアアップに関連した会話に、もっと意識的になるべきだ。「水を飲みに行くついでのちょっとした会話」ができないリモートワーカーは、仕事上の成功や達成を、自分で入念に記録するだけでなく、同僚に共有する必要がある。
進行中のプロジェクトの成果を上司に報告することは、自慢ではない。良いコミュニケーションだ。社内の掲示板やソーシャルチャンネルに参加することは、会社へのコミットメントを示すことになる。
そして、難しい業務や昇進が持ち上がったときに、より自然にコミュニケーションが取れる助けになる。きちんとツールを揃え、リモートワーカーが多く在籍する労働環境では、コミュニケーションがきちんと取れさえすればオフィスで働く人とリモートワークをする人に大した差異はないのだ。
(執筆:Kristen Ruttgaizer、翻訳:浅野美抄子/ガリレオ、写真:SetsukoN/iStock)
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This article was translated and edited by NewsPicks in conjunction with HP.