【解説】原油100ドルも。サウジに「ドローン攻撃」の深刻度

2019/9/23
中東情勢の緊迫化で石油価格の動きが激しくなっている。
9月14日、サウジアラビアにある国営石油会社サウジアラムコの石油施設2カ所が、無人機(ドローン)で攻撃を受けて生産を停止した。
イエメンの親イラン武装組織フーシが犯行声明を出した一方で、世界原油供給量の半分相当の生産が停止となったことで石油価格(WTI先物10月限)は、9月13日の1バレル=54.85ドルから9月16日に同62.67ドルへ約15%上昇。先週は58ドル程度で取引を終えた。
イエメンでは2015年から、サウジアラビアが支援するアブドルラッボ・マンスール・ハーディ暫定大統領、イランが支援するフーシ、アラビア半島のアルカイダの傘下組織「アンサール・アル・シャリーア」に分かれた内戦が続いている。犠牲者はすでに1万人以上とも言われる。
サウジアラビア主導のアラブ連合軍は、南部に部隊を駐留し、スンニ派のハーディ政権を支援し、フーシの拠点があるイエメン北部への爆撃を繰り返している。
それに対抗するフーシは、サウジアラビアへのドローン攻撃を今年から急激に活発化している。
サウジアラビア国防省は、9月14日の石油施設攻撃はイランの方角から行われており、使われたドローンはイランの「デルタ・ウイング無人航空機(UAV)」、巡航ミサイルもイラン革命防衛隊の「ヤ・アリ」だとしてイランの関与を主張している。一方、アメリカも、攻撃をイランによる「戦争行為」だとして非難。9月20日には、イラン中央銀行への制裁を課すと発表した。
アメリカ・サウジアラビア陣営とイランの関係はさらに悪化しつつあり、日本が原油輸入の8割以上を依存する中東の地政学リスクは拡大する一方で、日本経済にも影響が波及する可能性がある。
イエメン、イラン、サウジアラビアといった中東の状況や原油価格の展望について、国際情勢や原油市場の動向に詳しい経済産業研究所(RIETI)の藤和彦上席研究員に話を聞いた。
藤氏は、7月に書いたレポートでフーシによるサウジアラビアへのドローン攻撃のリスクを指摘していた。その“予言”が当たった形だが、「そのリスクはまだ消えていない」と強調する。
藤和彦(ふじ・かずひこ)経済産業研究所上席研究員、世界平和研究所客員研究員。1984年、早稲田大学法学部卒業後、通商産業省(現・経済産業省)に入省。1991年、ドイツ留学(JETRO研修生)。1996年、警察庁へ出向(岩手県警警務部長)。1998年、石油公団へ出向(備蓄計画課長、総務課長)。2003年、内閣官房へ出向(内閣情報調査室内閣参事官、内閣情報分析官)。2011年、世界平和研究所へ出向(主任研究員)。2016年より現職。主な著書に『シェール革命の正体』(PHP研究所)、『原油暴落で変わる世界』(日本経済新聞出版社)など。(写真:谷口 健)

繰り返されていたフーシの攻撃

9月14日にサウジアラビアの石油施設2カ所を攻撃したと犯行声明を出したイエメンのフーシは、イランから支援を受けているイスラム教シーア派系武装組織です。