【井上慎一】「おもろい」工夫から、新たな価値が生まれる

2020/2/7
日本初のLCC(Low Cost Carrier)として、2012年3月に運航を開始したPeach(ピーチ)。関西国際空港に拠点を置き、「空飛ぶ電車」をコンセプトに掲げるなど、従来の航空会社とは一線を画す独創的な発想や戦略で、低コスト化を実現してきた。2019年11月にはバニラエアを統合し、アジアのリーディングLCCを目指している。

そんなPeachをゼロから立ち上げ、牽引してきたのが、CEOの井上慎一氏。「日本とアジアのかけ橋になる」というPeachの使命は、中学時代からアジアとの縁に導かれた、井上氏自身の使命でもあるという。

井上氏のリーダーシップの原点や、LCCを天命とするに至ったルーツから、その哲学に迫る。(全7回)
「革新は非連続から起きる」
全く新しいビジネスモデルで、イノベーションを起こしたい。
そう考えたとき、日本のイノベーション研究の第一人者で、現在は一橋大学の名誉教授である米倉誠一郎先生にお話を伺いたいと思い、面会を申し込みました。
しかし、「イノベーションとは対極にある日本の航空会社の人と会って話す暇はありません」と、にべもなく断られてしまいました。
それでも「私は既存の航空会社とは全く違うビジネスモデルをつくりたいんです」と食い下がると、面会を承諾してくださいました。
米倉誠一郎氏(写真:遠藤素子)
米倉先生との面会からもさまざまな示唆を得ましたが、最も響いたのが「イノベーションは非連続から起きる」という言葉でした。
当時の私は、全く新しいビジネスモデルをつくって、イノベーションを起こしたいと考えながらも、どこかでライアンエアーを成功させたパトリック・マーフィー氏の手法をうまく取り入れればいいだろうと思っていました。
米倉先生はおそらく、私のその思惑を見透かしていたのでしょう。ライアンエアーのまねごとではイノベーションは生まれない。そう言われたも同然で、私は襟を正す思いでした。
そして、「新たな付加価値を見いだして、独創的なビジネスモデルを創り出すことが、君の目指すゴールになる」とおっしゃっていただいたことが、私の進むべき道を決めました。
それから試行錯誤を重ねて思いついたのが、第1回でお話しした「空飛ぶ電車」のコンセプトや、「ピーチ」という愛称でした。