原油価格 急上昇 サウジの石油関連施設攻撃受け
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米中貿易摩擦、消費税増税、オリンピック後、ブリグジットと様々なリスクが語られる昨今ですが、これらのそれぞれが想定外に強烈なネガティブ影響を日本経済に与えることは無さそうに思えるけれど、原油その他が通るホルムズ海峡の封鎖とか経常収支の赤字定着とか中国経済の本格的な崩壊とかいった事態が起きると想像を絶する衝撃が我が国経済に走る可能性もあながち否定しきれないように感じます。前回、中東の混乱で原油価格が100ドルを超えた時、我が国の経常収支が赤字に転じてちょっとした騒ぎになりました。
政府が大きな赤字と巨大な借金を抱えながら我が国が安定していられるのは、民間が政府の赤字以上に“貯蓄”するから我が国全体で広い意味のモノやサービスが残り、残った分を外国に“売って”外国との取引、つまり経常収支が黒字になっているからです。原油価格が100ドルを大きく超えて上昇し、その高値が定着すれば、この構図が崩れて外国との取引の収支尻、つまり経常収支が赤字になり得ます。そんなことが起きたら大変です。
一時に比べれば若干円高に動いている折でもあり、70~75ドル程度であれば物価の上昇で庶民の生活が多少苦しくなることはあっても決定的なマイナス影響は生じないでしょうし、今回のドローン攻撃だけが原因なら世界の原油備蓄が危機的になる前にサウジの生産は回復に向かうでしょう、たぶん。
とはいえ、中東産油国とホルムズ海峡を巡る情勢が我が国の死命を制する可能性を、あらためて思い起こさせてくれる出来事ではありますね・・・ (・_・;)資源マーケットは詳しくないので、相場については詳しい方の解説に譲りたいのですが、こうした事態は普通に想定されたことで、意外なことでも何でもありません。
サウジやUAEなどアラブ連合軍は2015年以降イエメン内戦という戦争を戦っています。
戦争相手であるイエメンからの弾道ミサイルや巡航ミサイル、そしてドローンによるサウジ攻撃は既に100回を超えており、日常茶飯事といっても差し支えないレベルで油田や石油施設がターゲットにされています。
それが今回はたまたまた迎撃に失敗し、防空網を潜り抜け重要施設に命中したというだけのことです。
要は突発的なテロではなく通常の戦闘行為なのです。
ただ今回の攻撃にはドローンだけでなく、イランの新型巡航ミサイル、ゴッズ1が使用されており(発表がないのは使用機種でイランの支援がバレるため)、より阻止が難しかった側面もあります。
国際政治の場から見ればイエメンの北半分を統治するフーシ派は一武装組織と表現せざるを得ませんが、アラブ連合軍介入前には、イエメン全土を統治しており、実質的にイエメン政府を主導していました。
軍に強い影響力をもっていた故サーレハ元大統領と連携していた事もあり、戦車や弾道ミサイルなど旧イエメン軍の多数の重装備を有し、その戦力は一国のそれと比較しても遜色がありません。
元々フーシとイランの関係はそれほど深くありませんでした。
しかし敵の敵は味方の論理で、イランによる膨大な支援を受け今に至っています。
その意味で、サウジにとってイエメン内戦への介入は、完全にベトナム戦争に近い状況になっているといって良いと思います。
今後サウジがイエメンから手を引くか、アメリカを焚き付けてフーシ派の支援者であるイランを叩くか、可能性と思惑によって原油価格は大きな影響を受ける展開となることでしょう。