【最終話・星﨑尚彦】瀕死のメガネスーパーを再建した成功法則

2020/1/11
プロ経営者と呼ばれる人たちがいる。職業=社長業。業種や規模に関係なく、経営の手腕を発揮する。メガネスーパー社長の星﨑尚彦氏はそんな1人だ。

三井物産、スイスのビジネススクールIMDを経て、初めて経営に携わったのは33歳のとき。すでに社長歴は21年になる。フラー・ジャコージャパン、ブルーノマリジャパンなど外資系企業のトップを務めたほか、2011年からはアパレルメーカー、クレッジの経営再建に力を尽くした。そして13年7月、メガネスーパー社長に就任。8年連続赤字で倒産寸前だった同社を奇跡的なV字回復へと導いた。

いじめられっ子だった少年時代、将来何をやりたいか分からなかった青春時代を経て、いかにプロ経営者という職業にたどり着いたのか。星﨑氏のこれまでを振り返りつつ、その哲学に迫る。(全7回)

毎月2億円の赤字を垂れ流し

僕がメガネスーパーの再建を託されたのは、2013年7月のことです。当時、メガネスーパーは格安メガネチェーンの台頭で業績が低迷し、債務超過に陥っていました。
2012年から投資ファンドのアドバンテッジパートナーズの下、経営改革を進めていましたが、業績は上向きませんでした。毎月2億円の赤字を垂れ流し、まさに瀕死の状態です。
それでも社員に危機感はなかった。社員は「ファンドが来たから何とかなる」と思ってしまっていたのです。ロゴを変える、店舗を改装する、制服を揃える、システムを入れる、テレビCMを始める、何となくいけそうじゃないですか。
しかし、売り上げはさらに落ち込み、ますますひどい状況になっていったのです。そこでアドバンテッジパートナーズが白羽の矢を立てたのが、他社で経営再建の実績があった私でした。
いくつかの企業で社長を務めたので分かるのですが、メガネスーパーは駄目な会社の典型でした。
本社の幹部社員は時間通り会議に来ないし、何も決まらない。場当たりの議論が多く、うまくいかないことの原因探しに終始していました。