[フランクフルト 12日 ロイター] - 欧州中央銀行(ECB)は12日の理事会で、利下げや量的緩和(QE)の再開など一連の追加金融緩和策の導入を決定した。ユーロ圏成長の下支えや物価の押し上げが狙い。

ドラギ総裁の理事会後の記者会見での発言は以下の通り。

<物価目標未達>

インフレ率が引き続き目標に到達しない状況を鑑み、今回の決定を下した。

<経済の脆弱性は一層長期化>

前回の理事会以降に入手した情報によると、ユーロ圏経済の脆弱性は一段と長期化しているほか、顕著な下振れリスクの継続や物価圧力の抑制がうかがえる。

<適切に対応する用意>

理事会は長期にわたり高度の金融緩和スタンスを取る必要があると改めて表明するとともに、インフレ率を確実に目標に近づかせるため、引き続きあらゆる政策手段を適切に調整する用意がある

<大多数の見解>

見通しは想定より大きく悪化しているというのが理事会の大多数の見解だ。成長とインフレ見通しの下方修正で、完全な対応が正当化された。こうした悪化について若干慎重な見方も示された。

<インフレ目標>

予想されるインフレ率は、2%に十分に近いがこれを下回る水準に向けて収束していくだけでなく、この水準で安定化する必要がある。

<予想を超える減速>

ユーロ圏経済の長期化している景気減速は、実際は予想よりも顕著になっている。

<潤沢な刺激策が必要>

中期的にインフレ率を2%に近いがこれを下回る水準に持続的かつ安定的に収束させていくためには、潤沢な金融緩和がなお必要だ。

<中期インフレは上昇の見通し>

ECBの政策措置や継続中の景気拡大、力強い賃金の伸びに支えられ、基調インフレは中期的に上昇することが見込まれる。

<総合インフレ低下>

年末にかけて総合インフレは低下し、その後上昇する公算が大きい。

<基調インフレは抑制的>

基調インフレ指標は引き続き全般的に抑制されており、インフレ期待を示す指標は低水準にとどまっている。

<成長への下振れリスク>

ユーロ圏成長見通しを巡るリスクは下方に傾いている。これらのリスクは主に地政学要因や増大する保護主義の脅威、新興国市場のボラティリティーに関連した根強い不透明性によるものだ。

<第3・四半期は小幅なプラス成長>

入手される指標や調査結果は引き続き、第3・四半期が小幅ながらもプラス成長になることを示している。

<マイナス金利>

マイナス金利は、成長の刺激と維持、およびインフレ維持の面において極めて有効だった。ただ、明らかに負の副作用がある。われわれは銀行の利益を守りたいのではない。これは明らかにわれわれの責務ではない。われわれは守りたいのは融資経路の円滑な伝達だ。

<利下げ幅>

当然、利下げの幅を巡る討議がなされた。ただ金利がマイナス圏にあることにはそれほどの懸念は示されなかった。利下げを実施することについては、極めて広範なコンセンサスがあった。

幅に関する討議は資産買い入れプログラム(APP)の再開に関するものだった。APPの副作用はそれほど大きくない。副作用はあるかもしれないが、利下げの副作用ほど大きくない。

<買い入れの対象>

買い入れの対象となる資産を巡っては討議されなかった。このことは、対象は以前の買い入れプログラムとおおむね同様になることを意味している。

<為替相場の目標はない>

ECBは責務を負っている。われわれは物価安定を追求するが、為替相場に目標は設定しない。

<ECBの政策手段>

すべての政策手段は利用可能と述べてきたが、今日その通りに実行した。

<財政政策>

年金産業や関連産業について、われわれは大きく懸念している。マイナス金利は金融政策に必要な手段だ。数多くのプラスの効果が得られた。こうした効果を増大させながら、どうしたら金利を押し上げられるか。その答えは財政政策にある。

<資産買い入れプログラムの余地>

資産買い入れプログラムの限度について討議する意欲が見られなかったことには納得できる理由がある。限度に関して討議する必要がないまま、かなりの期間にわたりこのペースで継続できる相応な余地が存在していることがその理由だ。

<財政政策>

財政政策が主要な手段になる必要があると見解が一致した。

インフレ率がより高い国との比較で、金融政策が緩和余地の面でおおむね比較可能であることを踏まえると、インフレ率がより高い国では財政政策がより大きな役割を果たしていたことが分かる。財政政策が責任を果たすべき時期に来ている。

フォワードガイダンス、利下げ、および貸出条件付き長期資金供給オペ(TLTRO)に関する道筋について広範な見解の一致があった。資産買い入れプログラムについては見解はこれよりは割れたが、結果的には広範なコンセンサスが得られ、採決を行う必要もなかった。明確に多数の賛成があった。

<ECBが描く基調的なシナリオ>

基調的なシナリオは比較的良好だ。これは英国の合意なき欧州連合(EU)離脱(ハードブレグジット)を勘案していないからだ。8月以降に激化した通商措置も勘案されていない。

こうした比較的良好な基調的シナリオの下で、インフレとインフレ見通しの下方修正があった。これは予測期間のすべてにわたるものだった。今日決定した措置はこうしたことに起因している。

<財政措置>

景気見通しが弱体化し、 顕著な下向きリスクが根強い中、財政的な余裕がある国の政府は時宜を得て効果的に対応する必要がある。

<労働コスト>

労働コストを巡る圧力は強まると同時に裾野が拡大しているが、これがインフレ動向に反映されるまでにかかる時間は想定よりも長くなっている。