[ブリュッセル 10日 ロイター] - 欧州連合(EU)は、域内の景気減速や、金融緩和に限界が近づいているように見える状況を踏まえ、厳格な財政ルールの見直しに動きつつある。EUの内部文書や複数の高官への取材で明らかになった。

EU欧州委員会は、定期的に再評価を求める現行の規定に基づいて年末までに財政ルールを検証することが義務付けられている。ちょうど足元で、加盟国の財政運営に関する基本合意である「安定・成長協定」の妥当性を巡る疑念が広がっているというタイミングだ。

こうした中で議長国フィンランドは、14日にヘルシンキで開くEU財務相会合で議論するために9日付で文書を策定したという。ロイターが内容を確認したところでは「当初のルールは域内の健全かつ持続可能な財政を確保するというのが唯一の目的だったが、一部からは財政政策が経済の安定化に果たす役割をより重視するべきだとの意見が出ている」と記されている。

伝統的に安定・成長協定の厳密な解釈を支持してきたフィンランドが、この文書でユーロ圏の財政政策が経済を支える役割の重要性が高まっていると認めた形だ。その理由として金融政策への「制約が強まる一方」となっている点も挙げた。

実際、欧州中央銀行(ECB)のマイナス金利導入や他の緩和策によってユーロ圏の存続自体を脅かすような緊急的なリスクは回避されたとはいえ、金融政策は物価や成長を十分に押し上げることはできていない。

さらに欧州経済のエンジン役のドイツが景気後退の瀬戸際にある点からも、これまでのように安定・成長協定を後生大事に守っているだけで良いのかが問われるかもしれない。ドイツ政府も、深刻な景気の減速に財政支出拡大で対応する意向を隠さなくなってきた。

EUが財政を緩める方向にある証拠として、フォンデアライエン次期欧州委員長が10日、イタリアの左派政治家で元首相のパオロ・ジェンティローニ氏を経済担当の欧州委員に起用する案を発表したことを挙げる向きもある。