【新】香港のアングラ経済を支える「信用」の正体
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中国の、特に広東省あたりにアラブ人やイラン人、インド人、アフリカや東南アジアあたりから商売をしに来るのは、唐の時代からあったことです。彼らは、中国の絹や陶磁器などを船で輸送すれば、莫大な利益を上げることができました。この物の流れは、日本人は20世紀になるまでほぼ関与することはなかったですが、世界史上の最も重要な物流網といえるでしょう。
中国から西方への物流網は16世紀からヨーロッパ人が握るようになっていきましたが、再びアラブ人やアフリカの人々が参入してきています。もっとも、中国人自身が輸送する分が圧倒的に大きいですが、現在は、繊維製品を中国から運ぶよりも、雑貨品、あるいは自動車を運んでいます。彼らの扱う商品からいって、仕入れの場は、香港よりも広州、それと雑貨品の都、義烏に移っています。
アングラ経済というのは、政府が生活や福祉、治安の世話をしてくれないところで成長します。日本でもネパール人やベトナム人といった出稼ぎ外国人は、政府があまり世話をしてくれないので、自分たちで助け合う仕組みが急速に発達してきています。1990年代までは、イラン人の間でそういう仕組みが発達しました。ビザや開業、教育、医療、埋葬など、ややこしい手続きが、一人ではなかなかできません。そういうところからも、民族や出身地ごとに助け合う仕組みは必須になります。
逆に、外国人であっても、普通に正社員になれて、役所の手続きなどが一人でスムーズにできるようになれば、アングラ経済の必要性はなくなり、弱まっていきます。中国も日本も、政府が出稼ぎ外国人の世話(介入)をそれほどやってくれる国ではなく、助け合いの仕組みが大いに必要とされます。
中国政府としては、アフリカを市場、そして農業や製造業の生産拠点としては非常に重視しているので、中国まで来ているアフリカ人をそこまでないがしろにもできないでしょう。中国政府が求めているのは、スーツケースに雑貨品を詰めて帰るような商売人よりも、アフリカ現地で流通や生産のパートナーになるような企業家でしょうが、スーツケースの商売人の中から、そういう企業家が出てこないとも限りません。今回は、香港のタンザニア人コミュニティという、私たちが普段目にする機会がない人たちの社会が題材です。
今日の第1回は、ごく稀に耳にする「アングラ経済」とはなんなのか、「香港在住タンザニア人」という謎に満ちた人たちはどうやって生きているのかにスポットライトを当てます。
前近代的で自分たちの暮らしや経済の参考にはならない、と思いがちですが、私はインタビューや書籍を通じてそうでもないと実感させられました。
明日と明後日は、そんな彼らの「助け合い」が「儲け」に直結する画期的な仕組みと、彼らが与えてくれる「閉塞感」だはのヒントです。ぜひ!今日から始まった小川さやかさんのインタビューは、ぜひ、3回目まで読んでいただきたいです!スワヒリ語のスラングまで操る小川さんが、タンザニア人コミュニティの奥まで入り込み、その実態を丁寧に分析しています。単なるアングラ経済のレポートではなく、人と人がどう関わり、助け合い、そしてお金を儲けていくか。日本人とは異なる価値観ながら、新鮮な視点で私たちの社会に疑問を投げかけます。
それにしてもこの「ボス」怪しげながらもとっても魅力的です。