この連載について
超優良企業の現在・過去・未来。四半世紀にわたってキヤノンを率いる御手洗冨士夫会長兼CEOが、過去の成功体験、現在の伸び悩みについて激白。令和の時代における逆襲シナリオを自ら解き明かす。
キヤノン株式会社(読みはキャノン、英語: Canon Inc.)は、カメラ、ビデオをはじめとする映像機器、プリンタ、複写機をはじめとする事務機器、デジタルマルチメディア機器や半導体露光装置(ステッパー)などを製造する大手電気機器メーカー。 ウィキペディア
時価総額
3.10 兆円
業績

『私が描いている理想の「パターン」があるんです。
「55・40・15・10」
売上高総利益率、いわゆる粗利が「55」%確保できれば、経費率「40」%で営業利益「15」%、純利益「10」%を達成できる。』
売上は、新規事業といっても買収部分が多いのが、これまでとの違い。もちろん買収も立派な戦略だし、既存事業や自社技術、資金力などの経営資源を投入することによって買収された側が伸びる可能性もある。逆に言うと、規模が大きい会社で次の柱となるような新規事業を自社で作ることがどれだけ難しいかも示唆していると思う。
そのうえで、2026年の予測については、個人的には厳しいのではないかと思う。現行事業が今と同程度で推移することを前提にしているが、記事で御手洗氏自身が述べられているように、複数の既存事業での台数減少は構造的問題だとも思う。
粗利については、原価率50%という言葉があるが、当たり前だが粗利率50%。そして『(社長就任当時の)62%だったら、とっくの昔に(キヤノンは)潰れていますよ。』という言葉もある。これは粗利率38%。
当たり前だが、メーカーは「作って売る」ことが利益の源泉。原価率と販管費率の構成比を見ることから業界理解・分析は始まると思っているが、「作っている」のに粗利率が4割以下ない会社が日本ではかなり多いのが実態。特にBtoCならば販管費がかかるのはしょうがないが、BtoBの場合は機能財であり、その「作る」部分で付加価値がかなり判断されるべきもの、言い換えれば企業はそこで勝負をしないとそもそも価格交渉力含めたコントロールを自社で持ちにくいと思っている。
価格、調達、製造プロセス、全部を併せて粗利率へのこだわりをどれだけ持てるか。これは営業にも関連していることで、営業のKPIが売上なのか粗利なのかによっても、どれだけ値下げをしないかといった強度も違うと思う。粗利率が安定的に競合他社比で高い会社は、KPIや様々なプロセスを通して一種文化として粗利へのこだわりが強いことが多いと経験的に感じている。
"粗利が「55」%確保できれば、経費率「40」%で営業利益「15」%、純利益「10」%を達成"