(ブルームバーグ): ファーストリテイリングの柳井正会長兼社長(70)は、自身の後継者に女性を起用する可能性があることを明らかにした。

柳井氏は3日の都内でのインタビューで、「忍耐強さ、細かいことを根気よく取り組む、美意識がある」という点で、同社のトップとなる人材には「女性の方が向いている」と指摘。さらに、女性の執行役員の人数を男性よりも多くしたいとの考えも示した。現在、同社のグループ執行役員43人のうち女性は6人にとどまっている。

ファーストリテイリングは女性管理職の割合を2020年8月までに30%にすることを目指していたが、18年8月時点ですでに36%と目標を前倒しで達成。今年6月には、国内ユニクロ事業の最高経営責任者に女性として初めて、グループ執行役員の赤井田真希氏(40)を起用した。

赤井田氏は01年に入社。銀座や上海など大型店の店長として実績を積み、本部では営業や人事部長などを経験した。柳井氏は、赤井田氏を後継者に指名する可能性について「あり得る」と述べた。生活が変わることへの不安などを理由に、女性には管理職に就くことに消極的な人材が多いと指摘。「ガラスの天井があるとは思わないようにしてほしい」と挑戦を促した。

米資産運用会社マシューズ・アジアのアナリストのキャスリン・コリンズ氏は、アパレルなど女性の顧客層が厚い分野では、顧客層の属性をマネジメントにも反映させて女性を取締役に据えた方が「ニーズをよく把握できる」とコメントした。

女性活用を政策の柱に掲げる安倍晋三政権は、管理職の女性比率を20年に30%まで引き上げることを目指している。しかし、厚生労働省の統計によると、18年度の女性管理職(課長相当職以上)の割合は11.8%だった。

海外労働環境を改善

同社は、多くの女性が働く海外縫製工場の労働環境の改善にも取り組んでいる。生産拠点を置くバングラデシュや中国、インドネシアなどアジア7カ国を対象に、国際労働機関と連携し、労働環境の整備や社会保障制度の充実に今後2年間で180万ドル(約1億9000万円)を拠出する。

柳井氏は、東南アジアの主要都市が10年後にはパリやロンドンのような都市になり「われわれにとって一番の市場になっていく」と予想。「世界の労働者が豊かにならない限りわれわれの服は売れない」と指摘した。

シティグループ証券の張影秋アナリストは、企業の社会貢献に焦点を当てた投資には人気が集まっており、長期保有のポートフォリオで採用されることがあると指摘。その上で、最終的に投資家が気にするのはやはり「株価のパフォーマンス」だと述べた。

(アナリストのコメントなどを追加して更新します)

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