【図解】「転職と副業のかけ算」で、年収を最大化する方法

2019/9/6
4度の「またぎ転職」によって、会社員として年収240万円を年収1000万にし、さらに副業年収4000万円を稼ぐ──。
人気ブロガーのmoto氏は、今日本でもっとも注目されるビジネスパーソンの一人だ。
キャリアは自分で取りにいく、給料はもらうではなく稼ぐ、自分を切り売りする副業はしない。
転職版「わらしべ長者」のキャリア・デザイン術を、解説する。

「安定」の定義が変わった

これから紹介する「転職と副業のかけ算」は、僕のような非エリートや、NewsPicksの読者の皆さんのようなハイエンドなビジネスパーソンに共通して役立つキャリア戦略だと思います。
そもそも、僕が「転職と副業を掛け算する」キャリアを選んだのは、先が読めない時代にあっても「安定」を得たいと考えたからです。
日本を代表する大企業が限界宣言するほど終身雇用が崩壊しつつある今、ビジネスパーソンにとっての安定とは何なのでしょうか?
僕は、これからの時代の安定とは、大企業に依存するのではなく、「個人で稼ぐ力」にシフトすることだと考えます。
かといって、成功率は1割以下といわれる独立や起業に挑戦するのは、ハードルが高い。
そこで有効なのが、サラリーマンでいることのメリットを享受しながら、個人でもお金を稼ぐことです。会社が潰れても生きていける防衛線を作るイメージです。
もっとも、僕が言う副業とは、自分の時間を切り売りして稼ぐことではありません。
その副業のノウハウは後ほど説明しますが、まずは、僕のこれまでの経歴と収入を紹介します。
今は新しい職場で営業部長兼事業開発をしており、副業として「転職アンテナ」というブログやnoteで記事を書いています。
副業による売り上げの内訳は、ブログの広告収入(アフィリエイト)が9割、noteの記事の課金収入が1割程度です。
ちなみに、講演活動やコンサルなどは、自分の時間を切り売りする労働集約的な仕事で消耗するため、現時点では考えていません。
僕は、自分を会社として捉える「自分株式会社」という考え方を大切にしています。
本業の勤め先を「取引先」と捉え、常にもっといい条件の取引先はないか、売り上げ(給料)を伸ばす方法はないか、自分に投資することで売り上げを伸ばせないか、無駄な飲み会などの経費を削減できないか、という視点で仕事をしています。
また、給料は「もらうもの」ではなく「稼ぐもの」という考え方も大切にしてます。
給与は会社からもらうのではなく、自分で稼ぐものだと考えると、企業に依存した働き方から抜け出す姿勢が持てるようになるからです。
(写真:吉澤菜穂/アフロ)
こうした考えを持つようになったキッカケはリクルートで出会った先輩に言われた一言でした。
「いくらスキルが高くても、会社を大きくするという意識がない人、つまり売り上げの拡大に貢献する姿勢がない人は、成長していかない」
この言葉にハッとさせられました。確かに、自社の売り上げを伸ばせる人材や、組織に貢献できる人材にならない限り、会社の売り上げも、自分の市場価値も上がらないのです。
僕は、サラリーマンであっても給料を「稼ぐ」という考え方にシフトしていかないと、会社だけでなく自分も伸びなくなると考えるようになりました。

担当に直接電話、ドメインを予測

僕は就活時代から、自分を売り込むタイプの人間でした。
学歴が地方国公立の短大卒であったため、行きたい会社にはエントリーすることさえできず、普通に応募していても受かりませんでした。
そのため、行きたい会社に行く方法を自分で編み出すしかなく、普通の就活のやり方とは違う方法で行動していました。僕は直接、人事部に電話やメールをしたのです。
結果、就活では大手IT企業とECサイトの国内最大手企業から内定をいただきました。一体、どうやったのか。
就活初期は、代表番号から人事あてに電話をしていましたが、「リクナビから応募してください」と言われるだけで、全く相手にしてもらえませんでした。
しかし、数多くの電話をこなすうちに、日頃から接点があるかのような雰囲気かつ、担当者を指名して電話をすると、人事担当者につながる確率が高いことがわかってきました。
有名企業の場合、就活イベントの案内や、就活関連記事などを見れば人事担当者の名前は把握できるので、「あ、いつもお世話になってます! 人事部の◯◯さんをお願いできますか?」と親しげに伝え、電話をつないでもらっていました。
(写真:當舎慎悟/アフロ)
また、電話だけでなく、メールも送っていました。僕は行きたい会社の社長のアドレスを、ドメインや名前から特定する方法を思いつき、この手法を駆使して、「御社を受けたい」という趣旨のメールを社長に直接送っていました。
もちろん、返信がないケースがほとんどですが、中には「こうした行動をする学生は面白い」と実際に会ってくれた社長さんもいました。
実際にお会いした際に、選考を受けたいという旨を伝えて面接の機会をいただき、結果的に内定をもらうことができたのです。
しかし、内定した大手IT企業や大手ECサイトを蹴って僕が就職したのは、地方にある社員数百人規模のホームセンターでした。
なぜホームセンターに就職したかというと、僕には入社2年後に大卒者の給料を抜き、30代で年収1000万円を超えるという明確な目標があったからです。
大手企業の総合職は、入社後にどこの部署に配属され、何をするのか、この先いくら給与がもらえるのかなどの直近の未来がわかりません。
これではキャリアにおける長期的なロードマップを描くことはできない。大手企業に総合職で入社することはギャンブルかもしれない、と考えるようになっていました。
一方で、受けていた地元のホームセンターは仕事内容や2年後の姿が解像度高く描けました。
就職の面接で、社長に「ディスプレーや広告をもっとこうしたら、このホームセンターの売り上げは上がります。私にそれをやらせてほしい。3年後には店長になってみせます」と話し、「面白そうだから、好きにやってみろ」と内諾を得ることができました。
僕は、自分が行う仕事の内容や活躍の仕方が手触り感をもって想像できる会社に入ったほうが、自分の未来が描きやすいと考え、この道を選ぶことに決めたのです。
(提供:Ikon-Images/アフロ)
就職活動ではこの「自分を売り込む」という姿勢は有効だと思いますが、中途の場合は、売り込む姿勢に加えて、自分ができることを明確に説明できるようにしておくことが必要だと思います。
ちなみに、僕がファーストキャリアとして営業・販売職を選んだのは、人にモノを売る営業という仕事が面白そうだと素直に思えたからでした。
実際、営業・販売職は自分の肌に合いましたし、早く店長になりたいと、1年目から経営会議に出させてほしいと自分の目標を発信していきました。
もちろん、業績もあげていない人間がそんなことを言っても、相手にはされません。
そこで、レジの行列の多さを改善するため、その日のうちにレイアウトの代替案をまとめたり、競合の進出を考えて、自社ポイントカードの導入を提案するなど、自分の持ち場を超えた仕事をすることを常に実践していました。
すると、店長になりたいという言葉に真実味が出てきて、周りもいろいろな仕事をくれるようになったのです。

個人ブログを売却

その後、僕は人材企業を経て、リクルートに転職しましたが、人材業界に転じたのは、ホームセンター時代に任された新卒採用業務がきっかけでした。学生を採用するために就活をテーマにした個人ブログを作ったのです。
ブログの内容は、就活のエントリーシートや面接に苦労する学生に向けて、対策や私の実体験から学んだこと、学生の悩みなどに答えたものでした。
この就活ブログで、企業が学生のどういった点を見ているか示したところ、その記事がヤフーニュースなどに取り上げられ、一気にブログの知名度が上がったのです。
ちなみに、今も変わらずに僕が考えている、ブログやツイートなどをバズらせる法則は3つあります。
この3つが重なったことで就活ブログが人気になり、思わぬチャンスが到来しました。
このブログを買収したいという企業が現れたのです。
僕はこの提案を快諾し、ブログを売却すると同時にその会社に転職しました。そして、この会社でコンテンツの編集や営業を手掛ける中で、コンペで一緒になったリクルートの営業マンから声をかけられ、オファーをもらったのです。
僕はリクルートからスカウトされた立場であったため、強気の給料交渉をしました。
「この年収なら行きます」と、当時の年収よりも200万円以上高い金額を提示したのです。
転職で年収交渉をするなら、相手が「自分を欲しい」という状態にするのが鉄則です。
そのためには、社内評価のみならず、自分の市場価値を高めなければいけません。では、どうすれば市場価値が高まるでしょうか。
僕は、「生産性」を高めることで、市場価値は上がっていくものだと考えています。
生産性とは何かと言えば、「会社の業績を伸ばす本質を見極め、効率的に行動する力」のことだと思います。
そして、その力は次の5つに要素分解できます。
リクルートでは、リクナビの媒体営業と学生集客を担当しましたが、顧客企業にはどんな課題があって、それを解決するためにどんな組織を目指していて、どのような学生が欲しいのか、という、会社の経営方針から人事担当者の現場目線まで持てるように、徹底した情報収集をしました。
相手と同じ目線を持つことができるようになると、「同じ立場に立ったとき、自分だったらどうするか」を考えて提案をすることができるのです。俯瞰して課題を特定する能力は市場価値を上げる上で必須なのではないかと思います。
もうひとつ、市場価値を上げる上で重要なポイントに、数字(実績)よりも「その数字を作るプロセス」が挙げられます。
数字を作ってきたプロセスを、自分の血肉にできているか、が大切です。
例えば、自社にマイナスなイメージを持っている、全く売り上げの無いクライアントに、自分なりのアプローチを通じて数字を獲得した経験などは、どんな会社に行っても必ず役立つはずです。
「どうしたら、この企業は自分から買ってくれるのか?」を思考し続け、例えば、求人広告が取れないなら、広告以外の部分でお客さんの課題を解決し、少しでも自社の売り上げを作るための知恵を絞る。
そして、その知恵をノウハウ化し、自分の資産にする──。
僕の経験上ですが、どんな仕事でも「自分の信頼」を積み上げることが資産となり、その資産が掛け合わさって自分のキャリアになるのだと思います。

自分のスキルを抽象化

その後、僕はリクルートからITベンチャーに転職しました。この会社は、小売業界の折り込みチラシをウェブ広告に切り替えるシステムの開発・販売をしていました。
人材業界とIT業界では業種が違います。
しかし僕には、リクルートで、紙メディアからWebメディアに切り替わるタイミングにおける営業経験がありました。
こうしたレガシーな業界における新しい取り組みに求められる能力は、業界を超えても変わらないと思っていました。
そこでレジュメには「紙からWebに切り替わる際に起こる業界のゆがみやクライアントとのコミュニケーションにいかに対応したか」という点を強調して書きました。
その結果、未経験でありながらも「新しいサービスに拒絶反応を示す顧客に対応できる営業マン」として採用され、業種をまたぐ転職を実現しました。
こうして僕は、これまでの4回の転職を通じて、年収を240万円から1000万円まで伸ばし、現在も新しい会社で収入を伸ばし続けています。
年収アップを実現した最大のポイントは、今伸びている業界に移動する「軸ずらし転職」というメソッドです。
そもそも年収とは、一部の役職や企業ランクを除くと、本人の実力とは関係なく、ぼぼ「職種×業界」のかけ算で決まります。
そして、今、伸びている業界は、優秀な人材を引き抜くため、平均年収も高い傾向にあります。
伸びている業界では、仕事の幅も広く、その内容も旬のテーマが多く、仲間もえりすぐりの人が多いため、刺激的です。
ですから、よほど自分のやりたいことがない限りは、転職は年収レンジの高い業界へ移ることをおすすめします。
では、どうやって他業界に自分を売り込めば良いのか。
それは、自分ができることを抽象化して、相手が求める要件に近づけることです。
僕の場合、リクルートから移ったITベンチャーの求人票に「小売業界での営業経験必須」と書かれていましたが、これまでの経験を抽象化して伝えたことで内定をもらいました。
僕は「リクルート」での経験を抽象化し、「小売業への営業経験はないが、紙からWebへ切り替わるレガシーな産業における営業経験はある」と説明をしたのです。
異業種や異職種に軸をずらした転職をするならば、面接では、相手が求める要件と手持ちの能力にいかに共通点があるかを示すか、要件から現状の自分の実力を引いて、足りない差分をどう身につけるかを示す方法が有効だと思います。

キャリアの2つの道筋

このような、「軸ずらし転職」をして市場価値を高めていくキャリアの道筋は、業界のスペシャリストになるキャリアと、職種のスペシャリストになるキャリアという2つがあります。
(提供:INGRAM PUBLISHING/アフロ)
同じ業界で「職種」をずらし、「業界のスペシャリスト」になる場合は、業界の未来を読めるようになることがキャリアアップのポイントです。
将来、この業界のビジネスはどうあるべきかというオピニオンリーダーのような立場を目指して転職をしていく。それが業界のスペシャリストです。
一方、他業界に軸をずらす「職種のスペシャリスト」の場合は、外資系生保の営業職のように、まずは確たるスペシャリストになって成果を出すことがポイントです。
ちなみに、営業職の場合、ものやサービスを売るノウハウは本質的なので、売れる人はクルマでも住宅でも売ることができるはずです。
「職種のスペシャリスト」における有効なキャリア戦略は、しっかりと今後伸びる業界を見極めて業界軸をずらしていくことです。
一方、「業界のスペシャリスト」になるには、今その業界でどんな仕事が旬なのかを見定め、何を足せば自分はそこに近づけるかを考えることが大切です。
いずれにしても、転職活動では、情報量が大切です。中でも、今、人を急速に募集している求人に注目しておくと良いです。
これから伸びる業界や職種がわかるだけでなく、世の中から求められている力(スキル)もわかるようになるので、そのスキルを身につけるように、目の前の仕事をしていくと良いです。
また、そこに自分の手持ちのスキルを加えれば、複数のスキルが掛け合わさって、レアで旬な人材になる確率も高まっていくはずです。
また、僕は転職を考えるタイミングを「自分の仕事が絶好調のとき」にしています。
仕事が調子の良い人は社内でも評価されて気持ちが良いかもしれませんが、外に出たら、もっと活躍できるフィールドがある可能性もあります。
上司との関係性が悪いから一刻も早く会社を辞めたい、という切羽詰まった状態で転職活動をしても、面接での魅力は半減してしまいます。転職は自分の鮮度が大切なのです。
仕事が絶好調なときほど、鮮度が高い魅力的な人材に見える上、「転職の意思はありませんが、条件次第では考えます」と強気に年収交渉もできると思います。
次に、副業について論じていきましょう。
先に説明した通り、現在、僕が手掛ける副業は、ブログ(転職アンテナ)、noteなどへの執筆からもたらされる広告収入です。
記事の広告収入で稼ぐことのポイントは、「本業で得た知見や経験」をコンテンツにすること。
僕が考える副業は、「本業で成果を出し、その知見を通じて副収入を得る」というものです。
本業での経験値を少しでも増やすためにも、自分の時間を切り売りする、講師業や現場のコンサルティングのような労働集約型の仕事には手を出していないのです。
本業のパフォーマンスに影響が出て、本業でも副業でも稼げなくなってしまっては本末転倒です。
誰にとっても時間は有限なので、少しでも多くお金を稼ぐには、時間給をいかに高めるかという発想が必要です。転職エージェントなどは、基本的に1対1での商売になりますが、インターネットを活用すれば、同じ時間・資本でリーチできる人数が幾何級数的に増します。
記事で一気に数万人にインパクトを与えるか、講師で目の前の数十人にインパクトを与えるか。お金を稼ぐ、という視点では前者のほうが利益は大きいはずです。

掛け値の元金を増やす

さて、最後にまとめですが、僕は生涯年収を最大化する、市場価値を高めるもっとも効果的な方法は、前述した通り、本業で得たノウハウを副業に生かす「転職と副業のかけ算」だと考えています。
かけ算は元の値が大きいほど、掛け合わせたときの積は大きくなります。
転職の元になるのは本業ですから、本業で成果や経験、成功体験を積み上げて、元の数字を大きくすることが重要です。
ある分野で徹底的に突き抜け、「100万人に1人の存在」になるのは難しいですが、本業で努力すれば、その分野の「100人に1人の存在」になることは十分に可能です。
「100人に1人の存在」になったら、自分は「職種のスペシャリスト」になるか「業界のスペシャリスト」のどちらが向くかを考え、業種か職種の軸をずらして転職し、「1万人に1人の存在」を目指す──。
本業での成果を元に、転職という手段を通して、自分の市場価値を伸ばしていくという考え方が、少しでも多くのビジネスパーソンの参考になればと思います。
(取材、編集:佐藤留美、構成:栗原昇、デザイン:黒田早希)