【真相】訪れた潮目。アリババがニューリテールに向かった理由

2019/9/4
小売業の効率を一段上げる新しいテクノロジーが出てきた時、新しいビジネスモデルが生まれる。「ニューリテール」の本質とは、小売業の効率を高めることだと『新・小売革命』(中信出版日本)の著者・劉潤(リュウ・ルン)氏は指摘する。
ではなぜ、ニューリテールという言葉をアリババの創業者ジャック・マー氏は提唱し始めたのか。そこには、eコマース(電子商取引)事業者がニューリテールに見いだした活路があった。
2018年の「独身の日」。同社の記録を再び更新した(写真:Imaginechina/アフロ)

再び「オフライン」の時代に

──そもそもなぜ、アリババの創業者ジャック・マー氏は、「ニューリテール」を提唱し始めたのでしょうか。
 マー氏は、2016年10月13日に「ニューリテール」を提唱し始めました。
「純粋なeコマースは消滅する。そしてオンラインとオフラインが合わさり、物流と融合することで、真のニューリテールが創出される」と説明しました。
彼のその一言で、「ニューリテール」という概念が正式に誕生し、またたく間に拡散しました。
さらに同時期、シャオミ創業者の雷軍氏や、京東集団創業者の劉強東氏も異口同音にニューリテールを提唱し始めたのです。
ビジネス界全体、特に小売関係者の間で大きな関心事になりました。
彼らは口をそろえて、「ニューリテール」の本質とは、小売業が「高効率」になることだと言っています。
──同時期に言い始めたことには何か理由があるのでしょうか。
2015年くらいからeコマースは深刻な問題を抱え始めました。ユーザー数の増加スピードが落ち始めたのです。
中国のEC化率は全体で15%、多い商品カテゴリーでも20%程度です。ユーザー数は増加し続けていますが、その増加スピードは明らかに落ちてきました。
つまり、eコマースをすんなりと利用できる層は、ある程度取り切ってしまったということです。