[北京/上海 29日 ロイター] - 中国の融資金利改革や米中貿易摩擦を背景とする景気の先行き不透明感を背景に、同国の銀行は今年下半期に収益と資産の質への下押し圧力が強まる見通しだ。

ただ、上場する大手行のうち3行は上半期に5%近い増益を確保しており、収益悪化の圧力は主に流動性の逼迫に直面する中小行で表面化している。中国政府は年初から既に地銀3行を救済した。

世界最大の商業銀行である中国工商銀行(ICBC)の谷樹行長(頭取)は記者会見で、「貿易戦争は不透明感を引き起こし、経済に下押し圧力がかかっている」と指摘。ただ、ICBCの上半期決算は4.7%の増益となった。

格付け会社ムーディーズ・インベスターズ・サービスの金融機関グループのシニアバイスプレジデント、レイ・フン氏は「下期の利益率は圧迫される」と予想する。

その要因の1つとして、同氏は、貸出金利の低下を促すために当局が実施したローンプライムレート(LPR)と呼ばれる融資金利の改革の影響を指摘。さらに、別の理由として「預金獲得競争が和らぐ見通しがない」と述べた。

ICBCの谷樹行頭取は、LPR改革が同行の純金利収入に与える影響は限定的だとの見方を示した。上期の新規融資でLPRを参照金利に使ったのは全体の約48%だったという。

利益率の指標である純金利マージンは6月末時点で2.29%と、3月末の2.31%から低下。収益が圧迫されていることがわかった。

交通銀行<601328.SS>は、上期純利益が4.9%増。[nL3N25N2G5]同行は、中国の商業銀行は資産の質の悪化圧力に直面しているとの見解を示した。

交通銀とともに五大銀行の一角を占める中国建設銀行 <601939.SS>も4.9%増益だった。ただ、両行ともに純金利マージンは低下した。

一方、国内の中小銀行では流動性の問題や業務リスクの高まりが既に鮮明になっており、大手国有銀行が救済に乗り出している。

ICBCは経営難に陥っている地銀、錦州銀行の10.82%株式を取得することが決まっており、建設銀は公的管理下に置かれた内モンゴル自治区の包商銀行の日々の業務運営を支援している。[nL4N24T0KZ][nL4N2333RX]

中国国際金融(CICC)のアナリスト、ビクター・ワン氏は銀行の下期業績の見通しについて、「経済が減速するなか、資産の質をどのように維持するかが主要な問題になる」と分析した。

中国銀行保険監督管理委員会によると、銀行部門の第2・四半期末(6月末)時点の不良債権比率は1.81%と、2009年以降で最も高くなった。[nL4N2582ML]

ICBCの不良債権比率は6月末時点で1.48%と、3月末の1.51%から低下。交通銀と建設銀も同比率は横ばいか低下となった。