【武井壮】パラリンピアンから「TVスター」が生まれるべき

2019/8/31
8月27日の『The UPDATE』のテーマは「東京パラリンピックは熱狂を生むのか?」。
"百獣の王"の異名を持つ武井壮氏、NPO法人スローレーベル理事長の栗栖良依氏、車椅子インフルエンサーの中嶋涼子氏、パラリンピック銀メダリストの上原大祐氏、東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会の委員、夏野剛氏、計5名のゲストを迎え、東京パラリンピックの成功について議論を交わした。
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古坂大魔王が最も優れていた発言として選ぶ「King of Comment」は、武井壮氏の「彼らができることを世の中は知らない」に決定。
パラリンピックが盛り上がるためには、パラリンピアンから「TVスター」が生まれることが必要だ、と主張する武井氏。番組放送後、その真意についてお話を伺った。
パラリンピアンからもらった「希望」
武井氏は、パラリンピックの特集番組などにも出演し、実際にパラリンピアンと競技を通じて数多くの真剣勝負に挑んできた経験がある。
そこで彼は、パラリンピアンの大きなポテンシャルに気づいたという。
武井 正直、僕は以前障害者の方々に対して、可哀想だと思っていた時期がありました。
今でも、少しだけ思っている部分はあります。
たとえば、僕は走ることが大好きで毎晩ダッシュをしているけど、足が不自由な人はできない。
もしくは、美しい景色を見た時にすごく感動するけど、目が不自由な人はこの喜びを知らない。
でも、実際に彼らに会ってみると、障害によって失ったものは大きいかもしれないけど、それに代わる素晴らしい技術や、我々がまだ手にしていない能力が、必ずあるんです。
車椅子を使って競技をする人たちに、僕たちは車椅子の技術で勝つことができません。
目が見えない人たちは、それでもサッカーができたり水泳ができたり、目が見える僕たちをはるかに凌ぐ“視力”のようなものがある。
耳が聞こえない人だって、僕たちが耳で感じ取るよりもずっと鋭敏に周囲の状況を察知する能力があったりする。
そういう彼らを見ていると、どんな状況になったとしても、僕たちは一歩前進することができるんだ、と知ることができる。
その気づきは、彼らと関わった上で僕が得た一番の財産です。
スポーツに人生賭けるなら
パラリンピックが熱狂を生むためには、パラリンピアンにスターが必要だ、と述べた武井氏。
パラリンピックやスポーツなどに知識があれば、観戦に行きたいと思うことはあるだろう。
しかし、「人気のある人」や「有名な人」がいなければ、多くの観衆は集まらない。
東京パラリンピックが盛り上がるためには、誰もが知っているスター選手が必要だ、というのが彼の主張であった。
そして、それはパラリンピアンの人生のためにも同様に必要なことである、と武井氏は語る。
武井 スポーツを好きな人が、人生を賭けてやっていきたいと思うなら、そのスポーツで食っていく必要があります。
いくらそのスポーツを本気でやっていても、知名度が上がらなければ、生活の軸にすることができません。
これはパラリンピアンに限った話ではなく、スポーツと人生をミックスして豊かな生活を手にする、というゴールにたどり着くためには、スターになることが必要なんです。
「不満」は扉を開かない
しかし、番組内では日本パラリンピック委員会の制約や、メディアでの露出機会の少なさなど、システム面に対する懸念も語られた。
また、障害者ということで、国立の運動場を貸してもらうことができなかった、という日常生活での怒りの声もあった。
議論中、上原氏が「障害者の人たちが怪我されると困るから、って言うけど、じゃあ健常者の人は怪我しないんですか?と聞きたい」と語った。
この発言に対し、武井氏は「でも、その質問の仕方じゃ扉は開かないですよね」と指摘する。
これもまた、武井氏の「パラリンピアンからスターが生まれるべきだ」という前提からくるものである。
武井 番組内で、日本のシステムの現状に対して、不満を語るような空気になる瞬間が何度かありましたよね。
仕方がない部分はあると思うけど、僕は正直ああいう発言があまり好きではありません。
そもそも、障害者の暮らしの大変さというのは、障害者である当事者がもっともよく知っていることであり、多くの一般人はなかなか知り得ないことです。
よく知らない人たちを責めることでは何も生まれません。
そして、公の場にスターとして立つ以上は、そこで働いている人たちのことも慮ることができないといけない。
スターというのは、人々に不満をぶつけることが仕事ではありませんから。
スターとは「責任を負うこと」
しかし、“障害者からスターが生まれる”ことについて、夏野氏から、日本社会では「障害者が力をもちすぎることで怨嗟の気持ちを抱く人も多くいる」といった指摘もあった。
障害者が自分たちのできることを公にアピールすることが、果たして本当に「スター」への道につながっているのか。
武井 怨嗟というのは誰もが誰かに多少なりとも持っているものだけれど、それだけでは害はあまり無い。
その対象たる人たちが誰かの気分を悪くするような言動をしたときに矢となって飛んでくるものだと思っています。
そして、スターとして生きる以上は、そのような自分の言動も、ある程度コントロールすることが責務だと思います。これは障害のあるなしに関係ありません。
公の場や公共の電波で発信するということは、必ずそこに公共の資金が使われていたり、テレビであれば、番組に出資しているスポンサーの存在があります。
スターになるというのは、自分ひとりのことではなく、そういった仕組み全体に対して責任を負うことです。
だから当然、インモラルな発言や反社会的な行動などをすれば、僕たちの価値は一瞬で失われてしまう。
今のパラリンピアンに足りないのは
武井氏もまた、スポーツで食っていくために「スター」の道を選んだ人間である。
武井 たとえば、たまたま有名なスポーツをやっていたとか、たまたま強いチームに所属していたとか、そういう人たちしかスターになれないのはつまらないと思ったんです。
だから僕は、一番マイナーなスポーツをやっている自分が一番有名になってやる、と思って芸能界にきました。
最初は僕も、収入がないどころか、借金も抱えている、無名のアスリートだったんです。
その状態から今ここまで来れたのは、単なる偶然ではありません。
“こうなりたい”と思って過ごした時間がそれを実現したんです。有名になるための活動の量、知識や経験、技術を積み重ねた、その総量で今のポジションにたどり着いた。
今のパラリンピアンを見ていると、それだけ全力で自分をスターにしようとしている人はまだいないと感じます。
ただ、彼らにとって2020年に東京でパラリンピックが行われることは千載一遇のチャンスじゃないでしょうか。
8月25日に開催された 東京2020 パラリンピック1年前カウントダウンイベント。マルクス・レーム氏(陸上競技/リオデジャネイロ 2016大会 金メダル)も参加
障害者の皆さんが、細かくカテゴリーが別れた、たくさんの種目の中で、自己実現をできる世界があり、それが我々の生まれ育った日本で行われる。
このチャンスを生かして、彼らの姿やそれまでの人生、彼らができること、もしくはできないこと、その全てを、多くの人に知ってもらえる機会です。
自らアクションを起こせ
2020年に向けて、メディアが取り上げることももちろん必要ですが、自分からもアクションを起こすべきだと感じています。
連盟や協会などに任せた施策だけでは間に合わないし、パラアスリート全員に大きなベネフィットが届くことは無いと思います。
僕と同じ量でなくてもいい、まずは0から1を全員が進むことで必ず変わります。そしてその中には10進む者も、100進んで手に入れる者もきっと現れる。
僕は、パラリンピアンのポテンシャルに脱帽しているからこそ、こっち(芸能界とスポーツを交えたスターの道)に来て一緒に頑張ろうぜ、という気持ちがあります。
スターというのは世界一の誰でも知っているようなアスリートの事だけではなく、今より少しでも有名になった明日の自分です。
スターになることは、少しずつ大きな責務を負っていく事でもあるけど、それを自信をもって全うする覚悟がある人は、ぜひ挑戦してほしい。
そして東京パラリンピックで多くの人の注目を浴びて、みんなを驚かせるスーパースターになりましょう!
9月3日のテーマは「妊活」
「妊活」という言葉が一般化しつつあるように、子どもを望むカップルが多くなっています。
一方で、日本は「不妊大国」と言われるほど、結婚したカップルの約6組に1組が不妊で悩んでいると言われています。
人工授精や体外受精など、生殖補助医療技術も進歩を遂げていますが、長年の不妊治療の末、妊娠に至らず、金銭的、精神的に追い詰められている人も少なくありません。
一体、なぜ日本は「不妊大国」になったのか。少子化が進む中、日本の妊活のカタチはどう変わっていくのか。
株式会社ジーンクエスト代表 高橋祥子氏、「#夫の不妊バイブル」の生みの親、吉川雄司氏、不妊や妊活の啓発に努める、NPO法人Fineの松本亜樹子氏、産業医の大室正志氏をお招きし、妊活の現状や未来について、徹底討論します。
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<執筆:富田七、編集:木嵜綾奈、デザイン:山田隆太朗>