【ダニエル・エク】音楽の聴き方が変化、人生のサウンドトラック

2019/9/20
ダニエル・エクが音楽配信サービスSpotifyを立ち上げたのは2006年のこと。2年後のサービス開始から約10年でユーザー数は世界2億3200万人にまで拡大した(19年7月現在)。いまや大ヒット曲の目安として、Spotifyでの再生回数が引き合いに出されることも珍しくない。

当初は、頑固な音楽レーベルからライセンスを取得して無料配信するなんて絶対無理!と、出資者が見つからなかったが、エクの決意は変わらなかった。それは音楽を愛する人々に、「世界中の音楽が自分のポケットに入っている感覚」は、絶対支持されるという確信があったから。

とはいえ、その交渉過程で「髪の毛が1本もなくなった」と苦笑するエクに、リード・ホフマンが話を聞いた(インタビューが行われたのは18年5月29日)。
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ホフマン データの重要性に気がつき始めたのはいつごろですか。レーベルだけではなく、アーティストにとっても大事ですよね。
エク 当然最初からレーベルに数字を提供していましたが、彼らはそのデータを分析して、アーティストに提示するシステムやインフラを持っていませんでした。
その過程で、データが物語るストーリーが失われてしまい、ダウンロード数やCD売上高といった数字の間に埋もれてしまっていた。
でも、私たちと直接関係を構築したいと考えているアーティストが増えていることがわかってきました。
そこでアウトリーチグループをつくって、アーティストやレーベルやマネジャーなどからなるエコシステムと直接協力させました。
(写真:Drew Angerer/GettyImages)
非常に興味深いのですが、ユーザーに「Spotifyに何を求めていますか」と聞くと、「すごいアーティストをもっと知りたい。そういうアーティストを発見するのを手伝ってほしい」という答えが返ってきます。
一方、アーティストに同じ質問をすると、一番の希望は――収益分配を増やせということ以外にですが――、「もっと多くのファンを獲得するのを助けてほしい」と言います。つまりユーザーとアーティストの希望は表裏一体なのです。