【新】世界2億3200万人が聴くSpotify、音楽業界を変えた男の情熱

2019/9/15
ダニエル・エクが音楽配信サービスSpotifyを立ち上げたのは2006年のこと。2年後のサービス開始から約10年でユーザー数は世界2億3200万人にまで拡大した(19年7月現在)。いまや大ヒット曲の目安として、Spotifyでの再生回数が引き合いに出されることも珍しくない。

当初は、頑固な音楽レーベルからライセンスを取得して無料配信するなんて絶対無理!と、出資者が見つからなかったが、エクの決意は変わらなかった。それは音楽を愛する人々に、「世界中の音楽が自分のポケットに入っている感覚」は、絶対支持されるという確信があったから。

とはいえ、その交渉過程で「髪の毛が1本もなくなった」と苦笑するエクに、リード・ホフマンが話を聞いた(インタビューが行われたのは18年5月29日)。
Listen to Masters of Scale at applepodcasts.com/mastersofscale and follow us Twitter.com/mastersofscale.
【ダニエル・エク】8歳からプログラミングを学ぶ
ダニエル・エク 新しいゲームを買ってほしいと母に頼んだのですが、「そんなお金はない」と断られてしまいました。「自分で作ったら」と言うのです。
私の中で何かがはじけました。「ああ、それってできるかもしれない」と。
そこでプログラミング言語のBASICを学び、ごくシンプルなゲームを作りました。そして「C++でプログラムする方法を学んでやるぞ」と決意しました。8歳のときです。
【ダニエル・エク】14歳で起業、「こんな大金どうしよう」
エク 非常に短期間で莫大な金額を手にしました。そのお金で、欲しかったテレビとギター、それにコンピューターも手に入れて、最終的に買いたいものがなくなりました。
「こんなたくさんのお金をどうしよう」と思いました。14歳ですから、投資するとか、どこかの金庫に預けておくというようなアイデアはありませんでした。
【ダニエル・エク】23歳でリタイア資産額達成。Spotifyをつくる
エク 昔は、自分の資産が一定の金額に達したら、リタイアして充実した余生を過ごそうと思っていました。それは40代くらいになるかなと思っていたのですが、実際には23歳でその数字に達してしまった。
当然、まだリタイアする気はありませんでした。と同時に、お金は確保したのだから、次にやることは儲けるためにやる必要はないのだとも思いました。
【ダニエル・エク】成功への「2つのハードル」を乗り越える
リード・ホフマン 音楽レーベルの収益を保証して、すべてはスムーズに進んだんですか。それともまだ困難はあったんですか。
エク ポイントは2つありました。1つは、Spotifyが消費者に受け入れられるか。もう1つは――こちらが本当のハードルだったわけですが――、レーベルからライセンスを取得できるかどうかでした。
【ダニエル・エク】音楽業界を生き返らせるまでの長い苦闘
ホフマン 業界を生き返らせるという感覚を得たのはいつごろですか。これといったきっかけはありましたか。
エク ええ。でも、思ったよりずっと長くかかりました。データを見ると、有料会員と無料会員の両方が大きく伸びていて、今後は定額の音楽ストリーミング配信が主流になると判断するのは難しいことではありませんでした。
ただ、レーベル側のさえない反応には、いつも本当に驚かされました。その時期があまりにも長く続いたので、自分の確信が間違っているのかと疑った時期さえあります。
【ダニエル・エク】音楽の聴き方が変化、人生のサウンドトラック
エク 非常に興味深いのですが、ユーザーに「Spotifyに何を求めていますか」と聞くと、「すごいアーティストをもっと知りたい。そういうアーティストを発見するのを手伝ってほしい」という答えが返ってきます。
一方、アーティストに同じ質問をすると、一番の希望は――収益分配を増やせということ以外にですが――、「もっと多くのファンを獲得するのを助けてほしい」と言います。つまりユーザーとアーティストの希望は表裏一体なのです。
もう一つ気がついたことは、音楽の聴き方が変わった結果、人々が聴く音楽も多様になってきたことです。
【最終話・ダニエル・エク】社内コミュニケーションで重要なこと
ホフマン 組織面について教えてください。会社が大きくなり始めたのはいつごろですか。
エク 会社をどう大きくするかについては、いつもとても意識しています。
あまり凝ったシステムにすると、スピードが遅くなるし、応用がきかない。現在の2〜3倍くらいをめどに設計するのがいい。これは私がずっと守ってきた指針です──。
連載「イノベーターズ・ライフ」、本日、第1話を公開します。
(予告編構成:上田真緒、本編翻訳・構成:藤原朝子、バナー写真:TT News Agency/アフロ、バナーデザイン:今村 徹)