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2)官民ファンドのような政府の介入で「オールジャパン」や「護送船団方式」で自国企業を保護する、それで「ゾンビ企業」が増えても官民合同を続ける、
どちらがよいか、世界中で議論されてきたことです。この2つだけだと両極端な考えで、両者の中間、たとえば政府は介入するにしても「ゾンビ企業」を出さずにうまく介入できる、といった主張もあります。
米国をモデルにするなら、1)自由競争と新陳代謝こそ競争に必要、という結論になるでしょう。ただし、米国でも穀物や畜産といった特定の産業は伝統的に政府とベッタリに見えます。
中国を見ると、明らかに2)官民合同の度合いが非常に高いです。石油、鉄鋼、建設はいうにおよばず、新興企業さえ政府との協同関係にあります。今のところ中国がうまくいっているように見えますが、いつまでも続くはずはなく、ファーウェイやアリババ、テンセントまで停滞した場合、中国政府が「ゾンビ企業」にするか「新陳代謝」を促すか試されるでしょう。
大きな問題が2つあります。
1つは、米国のように自由競争でバンバン潰れることで、本当に新陳代謝は起こるのか、ということです。米国の「新陳代謝」は、自動車や家電産業は衰退する、しかし、ITなどの新産業が代わりに興るので全体としては成長する、といったものです。そう都合よく、新たな新産業が興るのか、不安はあります。巨大な市場や高度な研究・教育があってこそ可能なことで、米国以外に可能なのかどうか、はかなり疑問です。
もう1つは、政府がそんなに上手く産業の発展を指導できるのか、ということです。日本もそうですが、中国も、政府の手柄、というわけではなかったように思われます。人口ボーナス、民間が米国の新産業をうまく模倣して取り入れたこと、国際市場が開かれていた、といった状況がうまく合わさった結果に見えます。
政府は物を売ろうとするべきではなく、つくろうとするべきではなく、投資すらするべきではないと思います。政府が上手に産業を指導することなど期待できません。一方、産業の衰退や企業の倒産はどうしても起きます。政府ができることは、人とモノの国際的な移動が自由であるようしておくこと、人々がそれによって利益を得て生きて行けるような教育や交通、通信の整備でしょう。
思い出すのは、フィンランドやスウェーデンなど北欧諸国の例です。福祉国家のイメージが強いですが、例えばフィンランドでは、まさに国を支えてきた携帯メーカーのノキアが苦境に陥った際に、リストラを止めるどころか、サポートしました。
逆に、ノキアの優秀な人材をスタートアップへと打ち込んだのです。同様のことが、スウェーデンのボルボなどでも確認されました。
企業を救済し続けることによる、経済成長の機会損失については、深く考えさせられます。
こうして生まれるのが「ゾンビ企業」です。
90年代前半にバブル経済が崩壊して、上場企業が軒並み青色吐息の状態になっていたとき、監査法人と投資銀行という世界からゾンビ企業を見ていました。
ダイエーにしてもJALにしても日産にしても、問題を先延ばしにしつつ時が来たら何とかなると粘って粘って粘った先に何も奇跡は起こらず結局は倒産や大リストラの嵐だったんですね。
何を言いたいかというと、ゾンビ企業で粘って粘って粘りまくっている(実際には粘っていなくて時間が過ぎるのを待っているだけなんですが)と現場の社員はどんどん疲弊していくんですね。
変に粘る前に潰してしまえば、エネルギーが満ち溢れている若いうちに社員はよそへ行って活躍できるわけです。40代だろうと50代だろうと、やり直すのであれば1日でも早いほうがいいに決まっています。
だけど、散々時間稼ぎをしておいて「ああ、やっぱりダメでした」となってリストラされたら、くたびれたうえに年も取っているしエネルギーも残っていないしで社員も再生できなくなってしまうんですね。
これがゾンビ企業の一番の罪です。
極論すると、企業というのは事業を行うための単なる「器」に過ぎません。旬を過ぎた事業がダメになるときもあるでしょう。だけど、中の人までダメにしてしまってはいけません。
会社を潰すのが悪なのではなく、中の人を再生できなくするのが悪なんです。
受け皿が極めて小さい理由は、人材の流動化がなされていないからです。
一度、好待遇の会社に入った人間は、出世競争に敗れても辞めずに居残る人がとても多いです。
厳格すぎる解雇規制に守られて、時間を高い値段で売っているのです。
解雇規制を撤廃・緩和して、会社がドンドン社員を解雇できるようになれば、人材の流動化は否が応でも進みます。
定年まで面倒を見なくてもいいので、会社の姿勢も「試しに使ってみようか」ということになり、受け皿は飛躍的に大きくなります。
職場を変えれば活躍できる余力を持っている人たちが、大企業の閑職で生産的な仕事をせずに「時間を売っている」のは、本人にとっても不本意でしょう。
解雇規制の撤廃・緩和による人材流動化がすすめば、存在意義のない会社が潰れるのは新陳代謝を促す意味で、「いいこと」になるはずです。
千葉市の中小企業の金融支援先を見たら、本屋や古いビジネスモデルの企業が山のように並んでおり、こうした企業群を存続させるために利子補給や信用保証に税金が多額に投入されていました。
市長に就任後、時間をかけて徐々に運転資金目的での融資に対して利子補給を無しにするなど制度改正を重ね、出てきた財源で投資促進やスターアップへの新規支援事業に組み替えてきました。
日本は伝統が好きなので、例えば百貨店の閉店も実態以上にニュースにしておおごとにします。巨大なアウトレットやショッピングモール、さらにはECが普及すれば、当然百貨店の閉店は発生するので、商業形態の変化でしかありません。
適切な速度での新陳代謝を是として施策判断をするよう職員には伝えるようにしています。
でも、そもそも会社を潰してしまうことは悪いことなのか?リストラは悪なのか?ジャーナリストの大西康之さんにこんな問いかけを挟みつつ、官民ファンドや産業政策のあり方や、日本のものづくりの未来について語ってもらいました。
第一に、清算型であろうが再生型であろうが、メディアが法的整理を「破たん」と報道するため、必要以上にブランド価値や従業員の誇りを傷付ける。
第二に、敗者復活のハードルが金融的事情により高いばかりか、廃業=敗北というレッテルが貼られるため、発展的廃業が出てこない。したがって、新陳代謝が図られない。
安倍政権が掲げた「開業率・廃業率ともに二ケタパーセント、かつ開業率が上回る」は正しい方向性である。
今こそ「早期申請・早期再生」を謳った民事再生法の立法趣旨に立ち戻ることが必要。傷口が浅いうちに、これらの法的整理や、私的整理等(事業再生ADRやREVICの活用等)の抜本的な再建スキームをとれば、再建可能性は高まるはず。延命すればするほど社会的なコストは大きくなる
国が企業に資本や人を入れて経営判断をするのは、もはや資本主義でなく「社会主義」、と断じる筆者。強烈に痺れます。
ゾンビ救済ではなく、新しい芽を育てるために、ゾンビ退治にこそ力を入れるべきですね。
今をときめく経産省の世耕大臣はどう思っているのでしょうか。正論からいえば「官民ファンドはなくなるべき」で誰もが一致しています。でもなくならない。明らかな設立趣旨違反だと思います