[東京 14日 ロイター] - マイナス金利政策はかつて、欧州や日本のような慢性的低インフレ経済だけの政策とみなされていたが、不本意な通貨高と戦う他の一部中央銀行にとっても魅力的な選択肢となりつつある。

マイナス金利政策の仕組みと落とし穴についてまとめた。

◎一部中銀がマイナス金利を採用した理由

2008年のリーマン・ショックに端を発した金融危機と戦うため、多くの中銀は政策金利をゼロ近くまで引き下げた。10年後の今も大半の国々では成長率が低く、金利は低水準にとどまっている。

追加利下げの余地が限られるため、一部の主要中銀はマイナス金利政策などの非伝統的手段に踏み切った。実施しているのはユーロ圏、スイス、デンマーク、スウェーデン、日本。

◎マイナス金利政策の仕組み

金融機関は中銀に預けた超過準備に対して利息の支払いを義務付けられる。中銀は、こうして資金をため込む金融機関を罰すれば、金融機関は貸し出しを増やすと期待する。

欧州中央銀行(ECB)は2014年6月にマイナス金利を導入し、中銀預金金利をマイナス0.1%に引き下げた。現在はマイナス0.4%まで下がっているが、景気のリスクが高まっているため、市場はECBが9月に追加利下げを実施すると予想している。

日銀は円高による景気への悪影響に対処するため、16年1月にマイナス金利を採用した。超過準備の一部についてマイナス0.1%の金利を課している。

◎支持派と反対派

マイナス金利政策の支持派は、借り入れコストの低下につながるだけでなく、他の通貨に比べて投資上の魅力を減らすことにより、自国通貨を安くするのに役立つと主張している。通貨が下がれば輸出競争力が高まる上、輸入コストの上昇を通じて物価が押し上げられる。

しかしマイナス金利政策はイールドカーブ(利回り曲線)全体に下押し圧力をかけ、金融機関の利ざやを圧迫する。超低金利の長期化によって金融機関の体力があまりにも弱まれば、貸し出しが控えられ景気に悪影響が及ぶ可能性もある。

中銀によるマイナス金利の深堀りには限界もある。預金者は現金保有を選ぶことにより、銀行預金にマイナス金利を課されるのを回避できるからだ。

◎副作用緩和のための方策

日銀は階層制を採用し、超過準備の一部だけにマイナス0.1%の金利を課し、残りの部分の準備についてはゼロもしくはプラス0.1%の金利を適用している。

アナリストによると、ECBも中銀預金金利を現行のマイナス0.4%からさらに引き下げる場合には、階層制などの「緩和措置」を導入すると予想されている。

しかし国によってキャッシュの配分にばらつきがあるユーロ圏のような地域では、こうした制度の設計は容易ではないだろう。一部の国では金利低下どころか金利の上昇につながり、逆効果になる恐れもある。