【崖っぷち】急加速する「世界食糧危機」のリアル

2019/8/16

国連の最新リポートが警鐘

地球規模で土地や水の資源が「前例のないペース」で減少している──国連の新たな報告書が警鐘を鳴らした。気候変動と相まって、世界食糧危機の脅威が迫っているという。
この報告書は52カ国の専門家100人以上がまとめたもので、8日にスイスのジュネーブで要旨が公表された。それによると、すでに5億人が砂漠化した場所に暮らしており、土壌は形成されるよりも10~100倍の速さで失われているという。
気候変動はこうした脅威に拍車をかける。洪水や干ばつ、暴風雨などの異常気象が世界の食料供給を減少させるためだ。すでに世界人口の10%以上が栄養不良に陥っている。報告書の作成に携わった専門家の中からは、食料不足が国境を越える移民の増加を促すと警告を発する声も上がった。
とくに危険なのは複数の大陸で食糧危機が同時に起きる可能性だと、NASAゴダード宇宙科学研究所のシンシア・ローゼンツワイグは指摘した。「世界各地の穀倉地帯が、同時多発的に危機に陥る潜在リスクは増しています」
(Rory Doyle/The New York Times)

食料不足が「移民」の流れを加速