【日本軍兵士】日本人犠牲者310万人、アジア・太平洋戦争の真実

2019/8/13
まるで預言者のように、今を生きる上で知っておくべき重要な真実を紹介する連載「The Prophet」。
今回登場するのは、『日本軍兵士―アジア・太平洋戦争の現実』(中公新書)がロングセラーを続ける一橋大学大学院特任教授、吉田裕氏だ。
日本近現代政治史、日本近現代軍事史の専門家である吉田氏は、膨大な資料に基づき、「兵士の目線・立ち位置」から、無残なアジア・太平洋戦争の現実に迫った。
日本人死者は、310万人(軍人・軍属が230万人、民間人が80万人)に達し、その9割が1944年以降の戦争末期に集中して亡くなったと推算される。
そのほとんどは戦闘で「名誉の戦死」をしたのではない。30万人を超える海没死、異常に高い餓死・戦病死、そして特攻──。
なぜ日本軍は、このような形での大量の無残な死を招いてしまったのか。
終戦記念日を前に、3日連続で、英霊たちが体験した壮絶な現実に思いを馳せたい。
吉田 裕(よしだ・ゆたか)/  一橋大学大学院社会学研究科特任教授
1954(昭和29)年生まれ。77年東京教育大学文学部卒。83年一橋大学大学院社会学研究科博士課程単位取得退学。83年一橋大学社会学部助手、助教授を経て、96年より一橋大学社会学部教授。2000年より一橋大学院社会学研究科教授。08年より現職。専攻・日本近現代軍事史。日本近現代政治史。著書『日本軍兵士──アジア・太平洋戦争の現実』(中公新書)、『現代歴史学と軍事史研究』(校倉書房)、『兵士たちの戦後史』(岩波書店)など多数。

縦割り組織の弊害

──吉田さんは著書『日本軍兵士』で、310万人に及ぶアジア・太平洋戦争の日本人の戦没者の9割以上が1944年以降の「絶望的抗戦期」に集中している、と指摘しています。なぜ、大本営など意思決定者は、無謀な戦争を長引かせ、大量の戦没者を出してしまったのでしょうか。
吉田 理由は大きく2つあります。