【メイ社長】日本のプロレスが世界で愛される理由

2019/8/10
8月6日の『The UPDATE』のテーマは「新日本プロレスは世界で戦えるのか?」。
新日本プロレスのハロルド・ジョージ・メイ社長 、タレントの倉持明日香氏、ラッシュジャパン人事部長 安田雅彦氏、TEAMマーケティング Head of Asia Pacific Sales/Jリーグアドバイザー 岡部恭英氏、計4名をゲストに迎え、新日本プロレスの現状とこれからについて議論を交わした。
視聴はこちら(タップで動画ルームに遷移します)。
番組の最後に、古坂大魔王が最も優れていた発言として選ぶ「King of Comment」は、メイ社長の「次のレベルに持っていく!」に決定。
新日本プロレスの親会社であるブシロードが、東京証券取引所マザーズ市場で新規上場。
プロレス・ビジネスが盛り上がりを見せている中、メイ社長は日本のプロレスにどのような可能性を感じ、「次のレベル」に向かおうとしているのか。
放送後にお話を伺った。
新日本プロレスはビジネス転換期
2018年5月にメイ社長が新日本プロレスの代表として就任した。当時の課題感について語る。
メイ社長 当時からプロレス自体はすでに盛り上がっていた。売り上げも復活していた。ただ、次のレベルにいけていなかった。
次のレベルというのは、つまりビジネスモデルの転換です。
チケット代が売り上げの半分を占めていたのですが、その部分をこれ以上大きくは伸びない。というのも、いま年間150試合を行なっていて、満員率は約95%です。
売り上げを伸ばすために、試合数を2倍にする訳にもいかない。選手たちも休みや移動を考えると現実的ではないし、試合数を増やすことはできない。
であれば、素晴らしい試合を観に来る「お客さま」を増やせばいい、と。
席を増やすことは難しいので、動画配信やテレビの放送など、様々な接点を作ることで多くの人々に届けることができると思いました。
動画配信サービスで海外に発信
メイ社長 そこで2014年に始めたのが、月額999円の動画配信サービス『新日本プロレスワールド』です。
気軽に見ることができる動画配信により、国内ファンはもちろん、海外にも日本プロレスの魅力が広く伝わり始めました。
好きになるきっかけを増やし、海外の興行を増やすことは、ビジネス転換をする上で私の大きな役割での一つです。
動画配信に加えて、TwitterやYouTubeも英語で発信を大きく増やしました。
日本のファンの方々であれば「我々のプロレスは海外と比べてここが違う」とか「この選手にはこんな歴史がある」とか、当たり前のように知っています。
しかし、海外の人たちは必ずしも知りませんから、そこをわかりやすく説明することも大切。
そのためにも、映像班や英語ができるスタッフを増やしていきました。
ビジネスを生むIP戦略
選手がもつ歴史を伝える重要性について、メイ社長は「ブランド」という言葉を使う。
メイ社長 選手ひとりひとりがブランドであり、IP(Intellectual Property)なんです。
容姿やファン層も選手によってまるで違う。その個性を活かすことで新たなビジネスが生まれるのです。
たとえばすごく好きな選手ができたら、その選手のタオルや帽子や本やDVD、全てが魅力的。
そうやって選手個人の人気が高まっていけば、テレビ番組や映画などに出演するなど、今まで新日本プロレスがやっていなかったビジネスも生まれていきます。
これがIP戦略です。スポーツだけではない、スポーツコンテンツビジネスの可能性が大きく広がるのです。
日本のプロレスが優れている点
動画配信の登録会員の半数近くは国外と、新日本プロレスは、海外でも着々とファンを増やしている。
日本のプロレスは、世界的に見てどのような点が優れていると考えるか。
メイ社長 魅力のひとつに、選手たちのスタイルがたくさんあることが挙げられます。
たとえば、大きな体格をもっていて、スピードはないけど、一回ぶつかったらすごいダメージがくるパワーファイタータイプ。
一方で、身体は比較的細くて、空中殺法がうまい人もいる。テクニカルに関節技を決めるのがうまい人もいれば、オールラウンダーにこなすタイプの人もいる。
国籍だけではなく、様々なスタイルがリング上で見れるのです。
次に、その伝統です。新日本プロレスには日本にもアメリカにも道場があり、選手たちはその道場で数年かけて肉体や技、精神を磨いていく。
一緒に暮らすことで選手同士のケミストリーも生まれる。相手の動きもすべて読み取れるからこそ凄い試合をすることができるのです。
海外の場合は学校などで学ぶことはありますが、師匠に弟子入りといった文化はありません。
それでは、一緒に暮らすことで磨かれる精神面やケミストリー、仲間意識は生まれません。
少し格好つけて言えば、日本のプロレスには「武士道」精神があるのです。それがまた海外でも本物と受け取ってもらえている。
一方で、番組内では「新日本プロレスは、なぜ女子プロレスラーを所属させないのか」といった疑問も呈されていた。
この点は、WWEでアスカが活躍しているなど、日本の女子プロレスラーが海外で活躍している現状がある。
メイ社長 女子プロレスラーについては、可能性としては考えられますが、現時点の新日本プロレスにも、たくさんの課題や可能性があります。
まずは、そこを解決してからだと思います。
初心者や女性ファンを取り込む
最後に、実際に試合を観ればその魅力がわかる、というメイ社長に、初心者におすすめのステップを伺った。
メイ社長 YouTubeでも色々な試合が観れます。あとは3分程度でその試合の紹介をする「煽りVTR」もおすすめです。掴みの大切な部分なので、かなりこだわって作っています。
エッセンスを凝縮して、それを見るだけで「じゃあ試合も見たい!」と思っていただけるようなものにしています。
試合後のインタビューにもドラマのエッセンスが含まれているので面白いです。
新日本プロレスには約70人の選手が所属していますから、きっとすごく好みにぴったりの人が一人はいると思います。容姿でもいいし、スタイルでもいい。
その人をTwitterでフォローすると、その人の試合以外の姿も見てもっと好きになる。
最終的には生で試合を観に行ったり、動画配信の会員登録やファンクラブに入会するなど、とことん好きになるための道もできています。
初めて来る人も、すぐに受け入れてくれるのが特徴です。
中には、長年のファンの方々が、新規の人たちに拒否反応を示してしまうと思われる人もいるでしょう。
でもプロレスは、40年近く応援しているファンの方が、初めて試合を観に来た人に、すごく熱心に教えてあげたりすることがよくあります。
試合によりますが、プロレスの会場のお客さんの比率は約4割が女性、約1割が子どもさんです。
どうしてこれだけ女性ファンの方々が増えたのか、と考えると、やはり会場が安心安全な環境として整っていて、仲間が作りやすい、という点もあると思います。
だからこそ、私たちも会社として女性ファンは意識しています。
女性に喜んで頂けそうなグッズを作ったり、イベントを行ったり、スタッフを増やしたり。
来年1月4、5日に東京ドームで行われる試合では、初めての試みとしてレディースシートも作ります。通常価格で特典付き。
内容は秘密ですが、女性の方々にとっては嬉しいサプライズ品になると思います。
8月13日は「MBAは役に立つのか?」
経営学の大学院修士課程を修了すると授与される学位MBAは、出世などビジネス・キャリア面でのメリットが多いとされ、取得する人や興味を持つビジネスパーソンが増えています。
一方で、高額の学費を払いMBAを取得したものの、給料が上がらず、転職に失敗したという例も聞かれます。
果たしてMBAは日本でも役に立つ最強の資格なのか?また、人気のMBAにかわるような今後注目の資格はあるのか?
エコノミストの崔真淑氏、ウェルスナビCEO・創業者 柴山和久氏、青山学院大学教授/アバナード デジタル最高顧問の松永エリック匡史氏、グロービス経営大学院研究科長 田久保善彦氏を交えて、議論します。
NewsPicksアカデミア会員の皆様は、下記より番組観覧にお申し込み頂けます。(先着40名)
番組観覧のお申し込みはこちらから。
<執筆:富田七、編集:木嵜綾奈、デザイン:斉藤我空>