【山口周】新時代を生抜く「思考・行動様式」の切り替え方

2019/8/10

「登る山」を変えてみる

──前回は、日本人は平成の丸30年を無駄にしてしまったというお話でした。
山口 面白いですよね。経済白書が「もはや戦後ではない」と言ったのが昭和31年。それから昭和60年代まで、約30年間はずっと右肩上がりで、平成の30年間はずっと下り坂。非常にきれいな富士山ができているわけです。
30年登って、30年下りる。その頂上で元号が変わっているというのは象徴的ですよね。
──となると、これからまた富士山の頂上に向かっていくことになる?
そうではなくて、山を変えようということだと思うんですよ。
つまり、「経済の山」あるいは「お金の山」は一度登って下りたので、これからは「豊かさの山」とか「意味の山」みたいな、まったく違う山を登っていこう──それが、『ニュータイプの時代』という本の提言なんです。
アベノミクスとか、定常経済がいいとかいうのも、結局は「お金の山」の理論ですよね。それとは違う山もあるはずです。それが定量的な指標になるのか、ならないのかというのはまた別の議論ですが、とにかく山を変えてみる。
だって、いったん下りたんだし、頂上も思ったほどすてきな場所ではなかったというのは、みな知っているわけですから。
なのに、来た道を振り返って「もう1回、頂上を目指そう」みたいなことになっているのは、やはりおかしい。
だから一度、この山を「終わらせる」ことが大事だと思っています。
(Benjamin Torode/Getty Images)

若者にもオールドタイプはいる