[ワシントン 7日 ロイター] - トランプ米大統領は7日、中国に対する自身の強硬なスタンスはいずれ米経済に恩恵をもたらすとの見解を示した。

しかし、中国がレアアース(希土類)を通商交渉の切り札にする可能性を示唆する中、米中の対立が悪化する兆しは鮮明となっている。

トランプ大統領が先週、対中追加関税第4弾の発動を警告し、中国は約10年ぶりの人民元安を容認。米政府はこれに対し中国を通貨操作国に認定するなど、米中貿易摩擦を巡る状況は急速に悪化し、世界の金融市場は大荒れとなった。

世界の景気減速懸念が強まり、米連邦準備理事会(FRB)が追加利下げを実施するとの観測が高まる中、米30年債利回りは過去最低付近に沈んだ。

トランプ大統領はホワイトハウスで記者団に対し、市場の反応は想定内とした上で、米経済の力強さを引き続き確信しているとし、「市場はいずれ史上最高の水準に到達するだろう。中国は米国にとっていかりのようなものだったからだ」と指摘。「中国との不公正な通商合意は米国に大きな打撃を与えていた」と述べた。

米ホワイトハウス高官らは、中国の通商交渉団が米国を訪れ、対中関税第4弾は回避される可能性があるという見方をなお示しているものの、ゴールドマン・サックスは前日、米大統領選が行われる来年11月前に米中が通商合意に達することはないとの見通しを示した。

7日までに金融市場は一定の落ち着きを取り戻しつつあるものの、中国がレアアースを交渉の駆け引きに用いる可能性が台頭する中、米中の対立は予断を許さない状況となっている。

中国のレアアース業界団体、中国稀土行業協会はこの日、対米貿易摩擦の高まりを受けた中国政府による対抗措置を支持するとし、米国の対応を「いじめ」と非難した。[nL4N25345J]

レアアースは「iPhone(アイフォーン)」などのスマートフォンや軍装備品などさまざまな機器に使用されている。

2011─2014年に米国の駐中国大使を務めたゲーリー・ロック氏は、貿易摩擦の解消に動いて中国と何らかの控えめな取引で合意に取り組むことが米国の国益になると指摘。「FRBなどは現在導入されている関税により、米国の平均世帯が負担するコストは1000ドル増えると試算している。価格の上昇は米企業の競争力低下にもつながる」と述べた。

また、米財務省元高官で、米ピーターソン国際経済研究所のシニアフェローであるフレッド・バーグステン氏は、軟調な金融市場や米経済指標の軟化を受けてトランプ氏が対中追加関税の発動を先送りにする可能性があるとの見方を示した。

同氏は「経済はトランプ氏の再選戦略にとって重要だ。経済を弱めるようなことは、ちゅうちょする必要がある」と指摘した。

輸入関税に反対するロビー活動団体「Tariffs Hurt the Heartland」の報告によると、6月の米関税収入は前年比74%増加し、中国などへの制裁関税で米国内の企業や消費者の負担が拡大していることが浮き彫りとなった。[nL4N2536PS]

米手芸用品大手ジョアン・ストアーズは、2018年9月に導入された関税に利益率が圧迫されており、レイオフを実施する可能性が高まっているという。

同社のウェード・ミクロン最高経営責任者(CEO)は「財務面で大きな負担になっている」と不満を漏らした。

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