【シェアNo.1獲得】アジアを魅了するスマホ、日本上陸。

2019/8/13
 ファーウェイやシャオミなど、名だたる大手がせめぎ合う中国スマホ市場。その中国で2016年、市場参入から8年でシェア1位に躍り出た中国スマホメーカー、それがOPPO(オッポ)だ。

 世界40カ国に市場を広げる同社が、昨年日本に上陸。今年7月、フラグシップモデル「Reno 10x Zoom」の発表を皮切りに、本格的にマーケティングを開始。日本市場で一気にアクセルを踏み込む。

 後発のOPPOが、過酷な中国市場で躍進している理由は何か。そして、Appleが極めて強い日本市場をどう攻略するのか。日本法人の社長の声をもとに分析する。

後発OPPOが、中国で躍進する理由

 OPPOは2004年、電気機器メーカーの子会社として中国で創業。2008年にスマホ事業に進出した。
 当時の中国市場は巨人Appleほか、ファーウェイやシャオミなどの大手がひしめく厳しい状況。OPPOの市場シェアは当然、1%にも満たない状態から始まった。
 しかし、そこから右肩上がりにシェアを伸ばしていく。スマホ事業進出から8年後の2016年には、ファーウェイ、シャオミなどの競合を凌駕。中国市場シェアNo.1に躍り出たのだ(2018年は2位)。
 グローバル市場にも迅速に進出。アジア・ヨーロッパなど、約40カ国に展開する。勢いは中国内にとどまらず、アジアでもシェアNo.1を勝ち取った(2017年・出荷台数)。
 そのOPPOが昨年、ついに日本へ進出。今年7月には大々的な記者発表会を開き、新製品の「Reno 10x Zoom」を発表。合わせて本格的なマーケティング活動も開始した。
「Reno 10x Zoom」で注目したいのは、ユーザーの利用シーンに沿った機能性だ。画質を落とさず10倍ズームができるカメラを始め、スライド式カメラが実現した画面占有率93.1%のスクリーン、ロック解除のスピードを前シリーズから28.5%アップさせたディスプレイ指紋認証などが、その例だろう。
 マーケットインの発想で開発された本製品。実は、後発OPPOが中国で躍進できた理由も、この徹底した「ユーザー目線」に収斂されるという。
 どのメーカーも強調するユーザー目線だが、OPPOのこだわりはどれほどなのか。OPPOが中国市場を惹きつける理由を読み解くとともに、日本市場の攻略法を探る。

OPPOが「こだわり抜く」3つの機能

 OPPOが中国で成功している理由を、日本法人オッポジャパン(OPPO Japan)の代表取締役社長、鄧宇辰(トウ・ウシン)氏はこう語る。
「OPPOの躍進の秘訣は、“お客様目線”と“最先端技術”の両方を追求した、製品開発力です。私たちは常に、お客様の需要から出発するのです」
 OPPOのスマホは、どのような過程を経て開発されているのだろうか。まずは「ユーザー主義」の観点から読み解いていく。
OPPOは新製品を出す前に、緻密なユーザー調査を行います。スマホ利用に関する不満・悩みを聞くアンケートや、新製品に対する意識調査を実施。発売後にはもちろん、その使い心地を調べる調査も行います。」(鄧氏)
 今やスマホには、数え切れないほど多くの機能があり、メーカーの差別化ポイントも多岐にわたる。そんな中、綿密なユーザー調査を経て、OPPOが「こだわり抜く」と決めた機能は3つ。それが、カメラ・バッテリー・ディスプレイだ。
「調査で見えてきたのは、人々がスマホのカメラに求めているのは、“SNSに綺麗な写真をアップしたい”というシンプルな願いの実現だということ。
 さらに、充電にかかる時間が長すぎるという声、動画視聴やゲームにスマホの全画面を使いたいという意見も多かった。そうと分かれば、私たちはそのニーズを満たす理想の製品を開発するだけなのです」(鄧氏)
 そこでOPPOのスマホ(R17 neo、Find X等)に搭載されたのは、A.I.インテリジェントカメラだ。膨大なセルフィーデータベースから、AIが顔の特徴を取得。性別、年齢、肌の色、表情など、複数の要素から自撮りの特徴を分析する。そうすることで個々のユーザーの写真に、最適な補正を施すことができるのだ。
「私たちは10年以上にわたりスマホの開発をしており、展開国も約40カ国になりました。全世界で蓄積されたデータを分析・活用することで、各ユーザーに最適な機能を提供できるんです」(鄧氏)
 さらにReno 10x Zoomには、画質を落とさずに10倍ズームできるカメラ機能を搭載。「スマホで綺麗な写真を撮りたい」というニーズに対し、撮影の幅を広げる。
10倍までズームしても、対象をくっきりと撮影できる。
 従来のカメラはもちろん、ズームすれば画質が落ちるのが一般的だった。これを解消するためにOPPOは、標準・超広角・望遠という焦点距離が異なる3つのレンズが連携する、トリプルカメラを独自開発。
 望遠レンズによる「光学ズーム」と、3つのカメラのデータをもとにした「デジタルズーム」を組み合わせ、10倍にズームしても高い画質を保てるようにしたのだ。
 OPPOが注力する2つ目の機能は、バッテリーだ。OPPOのスマホ(Find X)は、35分でフル充電が完了する。長年開発を続けてきた充電技術、「Super VOOC」が可能にしたスピードだ。
 Super VOOCは実は、社内の「非公式なプロジェクト」として作り上げられた技術だ。「バッテリー能力が、今以上に求められる時代が来る」と、数年前から確信していたOPPOの技術者らが、独自に研究を進めてきたのだという。
自社開発したバッテリーで、35分でフル充電が可能に(Super VOOCはFind Xに搭載)。
 彼らがぶつかった壁は、バッテリーサイズを維持しながら、発熱を抑える方法。バッテリーの構造を根本から変えることでその壁を乗り越え、今ではスマホ業界を牽引する性能になった。
 最後にディスプレイ。スマホの全画面を使いたいというニーズに応えるため、OPPOはいち早くノッチ(ディスプレイ上部の切り欠き)の取り外しに挑戦。Reno 10x Zoomではカメラをスライド式にすることでノッチを無くし、画面占有率93.1%を実現したのだ。
 こういった開発秘話が生まれる背景も、一貫したユーザー主義によるものだと鄧氏は語る。
「OPPOは、お客様ニーズに技術力で応えるブランドを目指しているんです。そのために、お客様に喜ばれる機能なら、どんなに困難でも開発しなければならない。その思いが一致しているからこそ、このような開発秘話が生まれるのでしょう」(鄧氏)

研究開発費は1年で2.5倍に

 ユーザーの需要を汲み取り、先端技術を駆使した新機能を次々と開発してきたOPPO。その背景には、強固な研究開発体制がある。
 数字を見てみると、2019年のOPPOの研究開発投資は、100億元(約1570億円)。2018年の40億元(約628億円)から大幅に増加した。
「グローバルの従業員数は、現在約4万人。その中で研究開発チームの人数は、1万人まで拡大する予定です。さらに今後10年間は、研究開発費の投入を増やし続けていきます」(鄧氏)
 この開発費は、実際はどのように使われているのだろうか。
「現在OPPOは、世界に10カ所の研究施設を持っています。そのうち4つの研究開発センターでは、短期的に実現可能な技術の研究に特化。ユーザーの需要をタイムリーに反映させ、スピーディーに商品化することを目的とした施設です。
記者発表会で登壇する鄧氏。
 残りの6つ研究所では、3〜5年先を見据えて、実現見込みのある技術の研究をしています。ここでの研究を、未来の製品開発に役立てていくのです。
 このようなダブルドライブ体制で、研究開発を進めています。こうすることで、迅速にお客様の需要に対応しながらも、先端技術で優位性を保つことができるのです」(鄧氏)
「技術・機能」と「デザイン性」の関係は、トレードオフだと考える人もいるだろう。だがOPPOの答えは違う。機能とデザインは、両立できるというのだ。
 その一例が「Reno 10x Zoom」に搭載された、「ピボットライジングカメラ」だ。端末内部からカメラが立ち上がる構造により、画面からノッチを取り外すことに成功。端末自体の美しさと、スマホの全画面を楽しめる機能性を共存させている。
「スマホは工業製品ではなく、芸術作品だ」と謳うOPPO。端末の色は、1000回以上のカラーテスティングを経て決まるという。上は「ピボットライジングカメラ」のイメージ図。
 深圳工業デザインセンターに加え、今年はイギリスのロンドンにもデザインセンターを設立した。
「これらのセンターに、全世界の優れたデザインリソースを集めています。そうすることで、お客様の想像を超えた未来のトレンドを生み出していくのです」(鄧氏)

日本市場攻略の日は来るか?

 ユーザー主義を掲げ、中国でのシェアを順調に拡大してきたOPPO。この先に、何を見据えるのか。
「お客様主義の姿勢は、これからも変わりません。その上で、やはりキーワードは5G。きたる5G時代に向けて、5G端末の研究開発はもちろん、商品化もアジアやヨーロッパを中心に進んでいます。
 さらに、ポイントはIoT事業の展開。たとえばスマートウォッチや、スマートホームなどの開発も視野に入れています。これから先、お客様の需要を満たし続けることを考えると、スマホメーカーが避けては通れない道だと考えているからです」(鄧氏)
 昨年から展開を始めた日本市場では、どのような戦略を描いているのか。日本での販売は現状SIMフリー端末にとどまっているものの、徐々に頭角を現している。
7月の記者発表会では、多くの来場者が「Reno 10x Zoom」の性能を体感した。
 SIMフリーのスマホ市場は、長らくファーウェイ、ASUS、シャープの3社がシェアの大部分を占めていた。だがOPPOは今年5月、初めて販売台数シェア10%を突破し、第4位に躍進(BCN調べ)。勢いを増しているという。
「中国では、北京、上海、深圳に、お客様との接点として、フラグシップショップを開設しています。
 実際に触ってもらえば、その性能、使い心地を理解していただけるはずです。日本でもOPPOの魅力を広く知っていただくため、お客様との接点作りには特に注力していく予定です。
 日本市場に、さらに素晴らしい製品を提供していけるよう、これからも全力で取り組んでいきます」(鄧氏)
(執筆・編集:金井明日香 写真:森カズシゲ デザイン:黒田早希)