[ロンドン 1日 ロイター] - イングランド銀行(英中央銀行)は1日、英国の欧州連合(EU)離脱(ブレグジット)を巡る懸念の増大や世界経済の鈍化に直面しているとして、成長率見通しを引き下げた。ただ他の主要中銀のように利下げを検討していることは示唆しなかった。

英中銀は引き続き緩やかな利上げを想定。ただ緩やかな利上げは「円滑な」ブレグジットや世界経済の回復にかかっているとした。

政策金利を0.75%に据え置くことも全会一致で決定した。据え置きは予想通り。ブレグジットがどのような形になるかに関わらず、金利はいずれの方向にも変動する可能性があるとした。

また10月31日のEU離脱を明言しているジョンソン新首相の誕生を受け、無秩序かつ合意なきブレグジットのリスクが高まったことが「ポンドの著しい下落」につながったと指摘。7月中旬時点で、ブレグジットに関する不確実性が「より定着した」とした。

英中銀は「設備投資におけるブレグジット関連の不確実性の高まりと純貿易に対する世界的な成長鈍化を反映して、2018年以降は基調的な成長率が鈍化し、潜在成長率を下回っているようだ」とした。

声明に対する市場の反応は現時点で限定的。

カーニー総裁は決定会合後、「世界的な貿易システムの将来、および英国のEU離脱がどのような形になるのかを巡る深刻な先行き不透明性が英経済の重しになっている」とし、「こうした先行き不透明性が解消するまで、こうした要素を巡る見方の振れが市場金利、株価、為替相場のボラティリティーにつながる」と述べた。

インスティテュート・オブ・ディレクターズのチーフ・エコノミスト、Tej Parikh氏は「9月の会合が注目される。無秩序なEU離脱が起こりそうな場合、中銀は混乱の中で企業や家計を支援するために事前の利下げをためらうべきではない」と述べた。

中銀は英国がブレグジットの衝撃を防ぐと仮定しているが、2019年と20年の成長率見通しを1.3%とし、5月時の1.5%、1.6%からそれぞれ下方修正した。

また来年第1・四半期に前年比でマイナス成長となる可能性を30%とした。

インフレ率については2─3年後に現在2%の目標を上回ると想定。ただ英国が円滑にEUを離脱した場合、ポンドや市場の金利見通しが急回復し、成長率やインフレ率が想定より鈍化する可能性があると言及。このため、3年後のインフレ率が必ずしも中銀目標を上回るとは限らないが、中銀は依然として国内経済の過熱を予測しており、利上げが必要であるとした。

英ポンド<GBP=>は一時1.21ドルを下回り、過去最安値を更新。英10年債利回り<GB10YT=RR>は、EU離脱の是非を問う国民投票後の2016年8月に英中銀が資産買い入れを実施して以来、最も低い水準を付けた。

HSBCのエコノミスト、エリザベス・マーティンズ氏は「市場に利上げ観測が戻るには、世界的な状況の回復やブレグジットの見通し改善を英国が確認する必要がありそうだ」と述べた。

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