エーザイ新薬治験で健康男性死亡 極めてまれ、厚労省が調査
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エーザイのニュースリリースによると、治験薬はE2082。AMPA受容体拮抗薬。
Clinicaltrials.govによると、登録されている試験は二種類。一本は日本のPh1、もう一本はアメリカのPh2。ただしアメリカのph2は単回投与試験であり、実質的にはph1bのイメージに近い。
ということは日本のPh1はいわゆるFirst in human試験。試験のClinicaltrials.govへの登録は2018年1月であり、すでに登録から一年半が経過していることを考慮すると、反復投与の高用量のステージに到達していたと考えられる。単回投与の最高用量は40mgで、アメリカの試験の最高用量も40mgであったことを考慮すると、少なくとも日本人の40mg単回投与は安全と判断された可能性が高い。
反復投与で事故が起きたとするとレンヌと同じパターン。Clinicaltrials.govでは反復投与の最高用量は15mg一日一回10日間。
追記(7月30日22時30分)
ニュースリリースには「治験薬の投与を完了後」とあること、E社のサイエンティフィックミーティング(2019年4月23日)の資料に「フェーズ1試験(First-in-human)を完了」とあることから、治験薬投与からイベント発生までにかなりの時間があった可能性がある。
追記(7月31日8時15分)
日経の記事によれば、該当被験者は10日間の反復投与終了後の4日間の入院観察期間を経て退院、その数日後に死亡した、とある。
この「数日」が何日なのかが非常に重要なのだが、通常日本で実施されるFirst-in-humanの試験においては退院後にもfollow-upの診察機会を設けることが多く、厳密にはfollow-up期間が修了するまでは治験の期間であり有害事象の情報も積極的に収集される。常識的に考えられる「数日」の範囲はそのfollow-up期間に収まるので、その期間に死亡したのであれば会社側にはその一報がすぐに入るだろうし、国にも速やかに報告される仕組みになっている。E社も国も公表が遅くないか?
また、エーザイは4月のサイエンティフィックミーティングの段階でE2082の「フェーズ1完了」としているにも関わらず、該当被験者は6月に死亡しそれが投与の「数日後」だったということになる。矛盾している?
続報を待つ。背景を補足します。
基礎実験で病気に効果が認められそうだと期待を持たれる化合物は、まず動物実験で人に投与してもおおよそ安全だろうということが確認されます。安全性の確認後、副作用の被害を最小限度で抑えられると仮定できる少数の健常人に薬剤投与を行い、副作用がないかを確認します。これを第一相臨床試験と呼びます。
第一相試験で安全性が確認された化合物は、少数の患者さんを対象に安全性と最適な投与量を確認する第二相試験、一定数の患者さんを対象に行い主に有効性を確認する第三相試験を経て、薬剤として世の中に出てきます。
今回の事故は、このうち、初めて人間に投与を行う第一相試験の間に起こっているようです。リスクはつきものですが、もし因果関係があれば、最悪の事態が生じたということになります。しかし、そもそも因果関係があるのかも不明のため、今後の精査が必要です。