【実録】新たなる搾取のしくみ。フードデリバリーの「闇」

2019/7/28

「秒単位」の闘い

ランチタイムのシフトに入った途端、スマートフォンからピコン!と音がした。ウーバーイーツ(Uber Eats)のアプリだ。注文のピックアップ場所は西38丁目のコシーナ・デル・サーだから、ここからたった5ブロック。やった! 西40丁目を自転車で走ると、マンハッタンはひどい渋滞で車がまったく動いていない。
少しして、またスマホが鳴った。さっきとは違う通知音。今度のデリバリーアプリはポストメイツ(Postmates)だ。ブロードウェーと36丁目の交差点にあるハンバーガー店シェイクシャックからの配達が2件。
悩ましい。配達に手間取るのを覚悟で、3件すべて引き受けるか。ウーバーだけにしておくか。ウーバーは「午後1時30分までに6件のデリバリーを完了すれば10ドルのボーナスを支払います」とのキャンペーンを打っている。だが、ポストメイツのほうからボーナスが入らないともかぎらない。
情報は少ない。ウーバーイーツは注文の品をピックアップするまで配達先を教えてくれない。ポストメイツの報酬は確定していない。
ポストメイツのタイムリミットが迫る。受けるか断るか、数秒で決断しなければならない。クラクションを鳴らすトラックや歩きスマホの通行人をかわし、警察に注意し、自転車のハンドルバーに設置したスマホをにらんで時間を計算して……
「受諾」のボタンを押す。
(Christopher Lee/The New York Times)

「戦場」と化すNYの街角