[ワシントン/サンティアゴ 23日 ロイター] - 国際通貨基金(IMF)は23日、四半期の経済見通しを公表し、2019年と20年の世界経済見通しを下方修正した。米中の関税や無秩序なブレグジット(英国の欧州連合離脱)などが成長の足かせとなり、投資やサプライチェーン(供給網)を妨げる恐れがあると警告した。

成長見通しは19年が3.2%、20年が3.5%とし、前回4月時点の予想からそれぞれ0.1%ポイント引き下げた。下方修正は昨年10月以降で4回目となる。

世界経済の活動は年初以降、総じて予想を下回っており、インフレは軟化しているほか、通商やハイテク技術を巡る緊張やディスインフレ圧力の増大が先行きのリスクになっていると指摘した。

世界貿易の伸び見通しは19年が2.5%、20年は3.7%と、前回から0.9%ポイントと0.2ポイント引き下げた。1―3月期の貿易高の伸びは約0.5%と2012年以降で最低を記録。アジア地域の新興国で減速が目立っている。

IMFのギタ・ゴピナート主任エコノミストは、世界経済が「微妙な分岐点」にあるとした上で、各国とも二国間の貿易不均衡や国際的な不一致への対処として関税を利用すべきでないと強調。「見通しへの主要な下振れリスクは引き続き通商やハイテク技術を巡る緊張であり、これは世界のサプライチェーンを著しく損なう恐れがある」と警告した。また、昨年の関税措置と今年5月の追加関税措置は20年の世界経済の生産を0.5%ポイント下押しするとの見通しを改めて示した。

さらに中国経済の予想外の減速やユーロ圏経済の回復の遅れ、合意なきブレグジット、地政学リスクの高まりなども大きなリスクだとし

「われわれの基本シナリオでは景気後退(リセッション)はないと予想されるが、大幅な下振れリスクは存在する。下押し圧力の根強い新興・途上国の動向が世界経済の回復のカギを握っており、先行きの見通しは非常に不透明だ」と述べた。

IMFは報告書の中で、米中の関税や米国の自動車関税、合意なきブレグジットが信頼感を損ない、投資を弱め、世界的なサプライチェーンを混乱させるとともに世界経済成長を基本シナリオ以下に著しく低下させる恐れがあると指摘した。

調査局のジアン・マリア・ミレシ・フェレッティ副局長は、残る3000億ドル相当の中国からの輸入品に関税を課す米側の動きについて、アジア全域の供給網に影響するほか、両国にとって「非常に高くつく」と警告。ロイターの取材に対し、「仮に中国と同じ規模の国からの輸入品全般に関税を課したとしても、他国の製造品に需要をシフトさせることは不可能」と分析した。

IMFは、中東湾岸地域での緊張の高まりや各国の内乱、商品(コモディティー)市況の変動などもリスクとした。

世界経済の減速や先進・新興市場国で見られるインフレ率の鈍化はディスインフレのリスクを表しており、マクロ経済政策を誤れば信頼感や経済成長、雇用創出に深刻な打撃を与えかねないと警告した。また貿易摩擦の緩和や貿易協定を巡る不透明感の払拭に向け、各国が連携して取り組む必要があるとした。

また、世界貿易機関(WTO)の既存ルールの実施継続、上級委員会を巡る膠着状態の打破、WTO規則を近代化してデジタルサービスや補助金、技術移転を対象にするよう呼び掛けた。

米経済見通しは、19年が2.6%と前回から0.3%ポイント引き上げた。20年は1.9%と変わらず。

日本経済見通しは、19年が0.9%、20年が0.4%と、それぞれ0.1%ポイント引き下げた。

ユーロ圏経済見通しは、19年が1.3%と変わらず。20年が1.6%と0.1%ポイント引き上げた。

中国経済見通しは、19年が6.2%、20年が6.0%と、それぞれ0.1%ポイント引き下げた。

新興・途上国経済見通しは、19年が4.1%、20年4.7%とし、前回から0.3%ポイントと0.1%ポイント引き下げた。

中南米経済見通しは、19年が0.6%と0.8%ポイント引き下げた。20年は2.3%で0.1%ポイント引き下げた。

*内容を追加しました。