【新】IoTのトップが語る、「モノ売らぬ」日立の勝算

2020/1/20
「IoTは辛抱。だから日本に向いている」。
そう語るのは、日立製作所の副社長、小島啓二氏だ。ハードウエアと、クラウドコンピューティング上のITサービスが融合する「サイバーフィジカルシステム(CPS)」の世界が訪れるからだという。
ハードが絡む世界では、日本にチャンスがある。
過去20年間は、液晶テレビをはじめ、商品が急速に値下りする「コモディティ化」が進む中、多くの企業が経営難に見舞われた。ビジネスモデルの変革が必要なことは何よりも明らかだった。カギを握るのは、製品を売って稼ぐのではなく、サービス化して稼ぐ「モノからコト」への脱皮。
日立はこれまで、2000年代後半に累計1兆円の最終赤字をたたき出し、「沈む巨艦」と揶揄されたが、その後、大手総合電機の中ではビジネス変革のトップを走ってきた。もともとは「何でも屋さん」と揶揄されるコングロマリット経営だったが、今や日立は黒字の事業でも、目指すべき方向と違うのなら、躊躇なく売却する。
一方で、直近でも、ホンダ系列の主要部品メーカー3社の買収に踏み切るなど、投資するときには一気にアクセスを踏む。
この事業の「選択と集中」の先にあるのは、IoT基盤の「Lumada(ルマーダ)」。データで稼ぐビジネスだ。
小島副社長は、日立の自動車部品事業の責任者であり、ルマーダ立ち上げ当時の中心人物でもある。本日から始まるIoT3日連載のトップとして、まずホンダ系列買収の深層のほか、IoTビジネスの極意に迫る。

買収の「判断基準」

──日立化成など御三家と呼ばれる子会社すら売却し、ソリューション事業へシフトする中、なぜ自動車部品というハードを買収するのですか。
小島 自動車部品事業のポートフォリオをどう整理するか、さんざん議論をしてきました。それまでは当社も、「ありとあらゆるものを手がけている」という状況でしたから。
そうして決めた判断基準は、その部品に「どれくらいたくさんのソフトウエアが載ってくるか」、ということです。