「消費増税不要、財政支出拡大」を主張する異端の理論MMT

2019/7/17
今話題を集めている「MMT(現代貨幣理論)」は、夢の経済理論なのか、世紀の暴論なのか──。
「Modern Monetary Theory」の頭文字を取ったこのアメリカ発の理論は、日本でも大いに注目を集めている。
MMTを提唱する代表的な学者であるステファニー・ケルトン・ニューヨーク州立大学教授は7月16日、日本で講演し、世界で話題を呼ぶMMTについて自論を展開した。 
ケルトン教授が語った、MMTの主なポイントはこうだ。
積極的な財政出動を検討するべき
◆政府は自国通貨建ての借金では財政破綻しない
◆政府支出は、財政規律ではなく、失業率(完全雇用の実現)、賃金、そしてインフレ率を重視すべき
◆過度なインフレには、増税(+インフレの主要因への対応)で対処できる
そして、日本については、「最も重要なのは、消費者の心理を安定化させること」だとして、財政支出の拡大を通じて国民の所得を増やすことを提案するとともに、消費増税はすべきではないと主張した。
積極的な財政出動の必要性を説くMMTは、アレクサンドリア・オカシオ・コルテス(AOC)下院議員をはじめとする米国の民主党左派を中心に、財源確保の理論的支柱となっている。
米民主党のアレクサンドリア・オカシオ・コルテス下院議員(写真中央、UPI/アフロ)
日本では、防災・減災のためにインフラ整備の重要性を指摘する「国土強靱(きょうじん)化」を唱える藤井聡・京都大学大学院教授らが、MMTを支持していることで知られている。
今回のケルトン教授の講演も、藤井教授らがお膳立てしたものだ。
藤井教授は、昨年12月まで安倍晋三政権の内閣官房参与を務めていた、安倍首相のブレーンの一人。
安倍首相は4月4日の参院決算委員会で、「MMTの論理を実行しているわけでない」と発言しているが、10月に消費税率の引き上げを控える中、MMTはさまざまな憶測とともに、日本でも注目を集めている。
だが、MMTとはそもそも何なのか──。どう評価できるのか──。
経済学者から批判が噴出しているが、その内容を把握するのは難しい。
そこで、NewsPicks編集部は、日本銀行出身の早川英男・富士通総研エグゼクティブフェローに素朴な疑問をぶつけてみた。

MMTの「門前払い」はダメ

早川英男(はやかわ・ひでお)富士通総研経済研究所エグゼクティブ・フェロー。1954年生まれ。東京大学経済学部卒業。1977年、日本銀行に入行。調査統計局長、名古屋支店長を経て理事を務めた。『金融政策の「誤解」』(慶應義塾大学出版会)で毎日新聞社のエコノミスト賞を受賞
──MMTとは結局のところ、どんな主張なのでしょうか。