【解説】カナダの競合を買収。日の丸ジェットに「勝算」はあるか

2019/7/10
三菱重工業傘下の三菱航空機(愛知県豊山町)が開発中の国産初のジェット旅客機「三菱スペースジェット」(旧MRJ)。
現在、商業運航に必要な「型式証明(TC)」を取得するため、アメリカを中心に試験を続けている。それと同時に、これから量産していくために必要な生産体制も構築しているところだ。
そして、三菱重工は、2020年半ばに全日本空輸(ANA)への初号機納入を目指している中で、大きな決断をした。
6月には開発から使ってきた機体名の「三菱リージョナルジェット(MRJ)」を「三菱スペースジェット」に改名した。
写真:三菱航空機提供 出所:NewsPicks編集部作成
さらに、7月、これまでライバルだったカナダ・ボンバルディアの小型旅客機部門「CRJ事業」を約610億円で買収した。
2008年の開発スタートからすでに11年。ついに競合まで飲み込んだ「三菱スペースジェット」に、勝算はどれくらいあるのか──。
長年、航空産業を細かく取材し続けている証券アナリスト出身の杉山勝彦氏が解説する。
杉山勝彦(すぎやま・かつひこ)武蔵情報開発代表、産業アナリスト。1943年、東京都生まれ。1966年、中央大学経済学部卒業。企業信用調査、市場調査を経験した後、証券アナリストに転身。和光経済研究所、メリルリンチ、クレディ・スイスなど外資系・国内系証券会社でエレクトロニクスや航空宇宙防衛産業をカバー。1996年、武蔵情報開発を設立。主な著書に『ハイテク神話の崩壊』『よみがえれ!国産ジェット』『日本のものづくりはMRJでよみがえる!』など

ボンバルのCRJ買収は「安かった」

──ボンバルディアのCRJ事業の買収をどう評価していますか。
杉山 まず、5億7000万ドル(約610億円)という買収金額については、意外に安くついたなと思いました。