[東京 8日 ロイター] - 日銀は8日、地域経済報告(さくらリポート)を公表し、全9地域の景気判断を据え置いた。米中貿易摩擦など海外経済の先行きを懸念する声は増えているものの、設備投資や個人消費などしっかりとした内需が支えている。全地域据え置きは2018年7月以来1年ぶりとなる。

今回のさくらリポートでは「企業・家計の両部門において所得から支出への前向きな循環が働くもとで、国内需要の増加基調が続いている」との判断を示した。前回(4月時点)と比べ、全地域で総括判断は据え置かれたが「米中貿易摩擦などを受けて、海外経済の先行きの不透明感の高まりやその影響を指摘する声が幾分増えている」と指摘した。

各地域の景気判断のうち、近畿は「緩やかな拡大を続けている」に「一部に弱めの動きが見られるものの」という文言を付け加えた。輸出や生産の弱めの動きを踏まえた修正だが、設備投資などの内需は堅調で、インバウンド消費も好調さを継続しており「緩やかな拡大という景気の基調は維持されている」(日銀幹部)と判断したという。

前回4月は、9地域のうち、東海と中国を除く7地域が生産の判断を引き下げるなど、貿易摩擦をはじめとする海外経済の不確実性が顕在化した。今回は、北海道が生産の判断を引き上げた一方で、近畿と中国が判断を引き下げた。

各支店からは「5月以降受注水準が一段と切り下がった」(松江・生産用機械)や、家電や車載向け受注回復時期が「19年度下期から後ずれする可能性が高まった」(仙台・電子部品デバイス)などの声があった。一方で「中国工場から米国に出荷一部製品の生産を国内に移管した」(甲府・生産用機械)、生産拠点をタイやベトナムなどに移管する動きが加速する中で「移管先で設備投資需要が高まっており受注が増加している」(秋田・生産用機械)などの動きも出始めている。

内需面では、消費増税前の駆け込み需要に対応する生産増の動きが聞かれた。

設備投資は「全体として積極的に実施していくとの声が多かった」(日銀幹部)という。ただ、製造業からは、米中摩擦の先行きが見通せない中で当初計画を削減するとの声も聞かれ「米中貿易協議の状況を含め注視していきたい」(日銀幹部)としている。

一方、非製造業は、人手不足に対応するための省力化投資や生産性改善、消費増税時の軽減税率に対応したレジの導入やシステム更改など向けの投資が出ている。

景気の総括判断は「拡大」6地域、「回復」が3地域となっている。

(清水律子)