抗生物質が効く時代はあとわずか......医療を追い詰める耐性菌に反撃せよ
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注目のコメント
メディアの取り上げ方はほぼ常に一面的で極端なので、鵜呑みにはしない方が良いと思います。
ただし、耐性菌に警鐘を鳴らすのは適切です。
薬剤耐性菌の感染による死者は2050年までに世界中で年間1000万人に達すると試算され、約800万人が命を落とすがんを超えると推測されています。
農作物、食用動物、人類への安易な抗菌薬の処方は耐性菌をあっという間に増加させました。細菌はそれほど賢い生き物で、人が新しい抗菌薬を開発しては、その耐性菌が現れるといういたちごっこです。
様々な感染症が克服されてきた昨今、人の寿命は20年も30年も延長し、人の死因は感染症から加齢の影響が大きな病気、がんに移行しました。がん患者が増え、薬剤開発もまたお金になる病気、がんに移行しました。
一方で、克服されてきた感染症に対する抗菌薬は価格が下がり、製薬会社は新規薬剤の開発のほとんどを中止しました。現在新たな抗菌薬の開発は抗がん剤のそれと比べると皆無と言っていい状況です。
安易な抗菌薬の使用と新規薬剤開発の停止は、間違いなく近い将来の感染症の増加を予兆しています。
あらゆる人にとってこの問題に協力できることは、風邪のようなありふれた病気で、抗菌薬をもらわないこと、飲まないことです。抗菌薬を使わなければ、耐性菌は生まれません。必要のない抗菌薬は使わない。これに尽きるのです。Post antibiotic era(抗菌薬の後の時代)がやってくるとWHOが警鐘を鳴らしています。
世界初の抗菌薬はペニシリンですが、ペニシリンの登場により平均寿命が40代から60-70代に急激に延長しました。それからは耐性菌と抗菌薬の発明は競合してきましたが、新たな抗菌薬の発明には行き詰まり、耐性菌が勢力を拡大しているのが実情です。
抗菌薬が使えない時代では、料理で指を切れば切断のリスクになりますし、ピアスが化膿したら命を落とす可能性が潜む時代です。肺炎になったら見守るしかありません。
日本においては、感染症という学問は比較的新しく、開業されている先生方の中で、学んだことがない方も多くいらっしゃると思います。そのため、無駄な抗菌薬しようが世にあふれています。アジアの途上国なんかは薬局で抗菌薬が何でも買えるので、ものすごい勢いで耐性菌が広まっています。
よく見かける、風邪に抗菌薬を使うというやり方は、患者個人の損失だけでなく、国や世界レベルでの損失につながります。
我々が広く普及したいのは、風邪で抗菌薬を出された時に、患者側から必要ですか?と声をかけてくれるようなヘルスリテラシーです。抗菌薬の飲み薬の中で、日本で8割以上のシェアを持つ薬がいくつかありますが、体にほとんど吸収されないため、DU薬(だいたいうんこになる薬)としてさげずまれています。
我々の子供や孫の世代が安心して抗菌薬を使えるよう、正しい抗菌薬の使用方法の普及が急務です。