新着Pick
827Picks
Pick に失敗しました

人気 Picker
ナノリボンについて本文では雑な説明がなされていますが、従来知られるシート状のグラフェンの幅が数ナノメートルと制御された物質となります。

これは、従来2次元のグラフェンシートを擬1次元の帯(リボン)として扱うことを目的としています。その構造(幅やアスペクト比)を制御することでグラフェンのバンドギャップ制御、つまり、その電気伝導や発光色(吸収される光の波長)を調整できるようになります。

そのため、従来であればLED研究などに見られるような物質探索によるバンドギャップ制御を、グラフェンナノリボンの構造・スケール調整による簡単かつ連続的なバンドギャップ制御に転換できるという革新性を有しています。ボトムアップ法の一つであるこの有機合成に期待される技術が、今回最も良い形で現れたのではないかと思います。

また、個人的興味となりますが、先日グラフェンシートと同じ構造を持ち、その炭素が同族の鉛Pbに置き換えられた「プランベン」が報告されてました。別の物質でも同様な構造を形成できることに驚きです。
https://newspicks.com/news/3894171

この他にも、炭素をシリコンSiに置き換えた「シリセン」、ゲルマニウムGeでできた「ゲルマネン」、スズでできた「スタネン」も過去報告されており、それぞれで優位な物性値が異なります。これらの合成にも本手法が適用できれば、この研究成果の意義がどんどん広がっていくことかと思います。
伊丹研のホームページめちゃ分かりやすいです。
http://synth.chem.nagoya-u.ac.jp/wordpress/publication/livingapex

元論文こちら。
https://www.nature.com/articles/s41586-019-1331-z

ついにリビング重合で作れるようになったんですね。面白すぎる。

グラフェンがどう有用かは多分どなたかのコメントに書いてあるとして、今回のリビング重合の面白さを書いてみます。
一般にグラフェンは好きな大きさなコントロールして作ることはできません。グチャっと大量に作るしかない。有名な作り方に、黒鉛からセロハンテープでペリッと剥がす、というものがありますが、これじゃあいろんな大きさのものが取れてきてしまう。
ナノメートルよりも、小さい領域では、大きさと性能が深く結びついているので、特性を調べる研究の上でも、実用上の特性を向上させるためにも、狙った大きさのものをたくさん作れることにはとても価値があると考えられていました。
そして、従来から、伊丹研はグラフェンの精密合成で目覚ましい成果を上げているグループで、そもそも、炭素の六角形の環を辺を2,3個合わせて繋いでいく(日本語で表現しきれない)ことでも、すごい成果だ、として注目されていました。
たまに、有機化学はレゴブロックを繋ぐように炭素を繋いでいく、という喩えが使われますが、この喩えだと、繋ぐのがいかに大変かが表現できていないからもどかしい。
で、今回の成果は、そもそも2,3個を精密に結合させるのも大変だったというのに、一挙に何十個も繋いでしまおうというもの。しかも、大きさを揃えたまま。
大きさを揃えて炭素を何十個も何万個も繋げる、というのは、グラフェンのような構造でなければ、それなりに一般的な手法ですが、それがグラフェンにも適用できるなんて。

うーん、無理だ、いい喩えが思い浮かばないからこれ以上の説明はできない。
規則的で何と美しい構造。まさかグラフェンをリビング重合で繋いでいくことができるとは。昔だったらこんな反応式を描いて見せたら、アホか行くわけないだろそんな反応、君勉強不足だなと笑われそうです。

伊丹先生が先導されている「縮環π(パイ)拡張(=APEX, Annulative π-EXtension)反応」は、小さな芳香族炭化水素をつないで大きな芳香族炭化水素に変換する、カップリング反応の一種で、今回はそのAPEXを連続的に起こす「重合」ということですね。
モノマー名に「ベンゾナフト"シロ"ール」と"Sil"が入っているとおり、ベンゾナフトールの一部をSi(ケイ素)原子で架橋したものがモノマー単位です。この構造に由来して位置選択性が高いのもさる事ながら、脱離するケイ素は低毒性、低環境負荷なので、クリーンな反応である(と思われる)点も、量産を考える上で大きな利点です。実にお見事。

さらに、側鎖が付加していても良いようなので、(電子物性に影響がない範囲で)物性を制御できそうなのも興味深いです。例えば溶解性をコントロールできれば、溶媒から薄膜キャストしたり配線描画したりといった操作がより容易になるはずです。

高分子は絵で書くと一本の鎖ですが、その鎖の集合体としての挙動は実に多様で、自由な鎖として振舞えるものもあれば、一度束になってしまうとほぐせないもの、塊を作りやすいものなど様々です。
上記、成膜や配線などを考える上で必要な、そういう形態学的な議論をしやすくなるという意味でも、構造明確なポリマーが得られたのは価値があると考えます。

物性研究が一気に進展しそうでとても楽しみです。

★JST発表資料
分子構造、用語など丁寧にまとめられています
https://www.jst.go.jp/pr/announce/20190627/#YOUGO6
六角形の環状の炭素分子がつながった「ナノメートル」サイズの炭素素材で、大きさなどによって電気の通しやすさなどの性質が変化する「グラフェンナノリボン」、かなり近い将来実用化される見通しで、コンピューターの小型化高性能化されるとのこと。期待しましょう。
グラフェンナノリボン。「六角形の環状の炭素分子がつながった「ナノメートル」サイズの炭素素材で、大きさなどによって電気の通しやすさなどの性質が変化するため、次世代の半導体などへの応用が期待」されて物質とのこと。夢の物質とも言われているそうです。
コンピューターの更なる小型化への期待が高まります。

【次世代の半導体デバイスを支える新材料「グラフェンナノリボン」とは?】
https://academist-cf.com/journal/?p=5144
【グラフェンナノリボン:その合成と応用】
http://bit.ly/2ZPesOA
量産技術という点がワクワク。新しい物質が生まれることも重要だが、量産可能になって初めて使える。

素材系の皆様のコメント、また川内さんが以前書かれた伊丹氏の記事も面白く、是非併せてご覧いただきたい(皆様ありがとうございます!)。特に川内さんの記事が面白く、自分は化学を「レゴ」と捉えたことはなかったので目から鱗だった。ベンゼンから始まって、今はグラフェンと、炭素と歩む人生に見える!
夢の物質という言葉がいいですね。
研究室で生まれたものが社会実装されていく。
数年後とかにふと手にした製品がこの研究に関係するものだったら面白い。
まだまだ日本の技術研究は健在のようです。他の研究者達にも頑張ってもらいましょう。それが日本の将来の産業を支える事になるので研究投資にはしっかり資金を回してもらいましょう。
投資と知財管理がちゃんと出来る企業なりのサポートを期待したいですね。