[ニューヨーク 25日 ロイター] - 米連邦準備理事会(FRB)当局者らは25日、早ければ来月にも50ベーシスポイント(bp)の大幅な利下げを求めるトランプ大統領や市場の圧力をけん制した。

パウエルFRB議長は外交問題評議会(CFR)で行った講演で、大統領や市場からのFRBの独立性を強調。FRBは「短期的な政治圧力から隔絶」していると述べ、トランプ大統領の利下げ要求をけん制したほか、利下げを行わなければ市場の失望を招く可能性があることについて質問されると、「FRBの任務は金融状況の短期的な動向に対応することではない」と答えた。[nL4N23W3MB]

金融政策については、米経済が堅調に推移すると見込まれる一方、通商問題などを巡る不確実性が利下げの根拠になり得るかどうかを見極めようとしていると説明。「不確実性が引き続き見通しを圧迫し、追加緩和の必要性につながるのかといった疑問にわれわれは取り組んでいる」とした。

同時に「多くの連邦公開市場委員会(FOMC)参加者は多少の追加緩和策を講じる根拠は強まったと判断しているが、金融政策は個別のデータや短期的な心理の振れに過度に反応すべきでない点にも留意している」と述べ、「今後の経済見通しに関する情報を注意深く監視しながら、景気拡大の維持に向け適切に行動する」と強調した。

セントルイス地区連銀のブラード総裁は25日、米経済は7月の連邦公開市場委員会(FOMC)で50bpの利下げが必要になるほど悪い状況にはないとの考えを示した。

総裁はブルームバーグTVとのインタビューで「現状を踏まえると、50bpの利下げは行き過ぎと感じる」とし、「50bpの利下げが必要な状況にあるとは考えていない。しかし、25bpの利下げには前向きになるだろう」と語った。[nL4N23W3KP]

FRBは18─19日に開いたFOMCでフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を2.25─2.50%に据え置くことを決定。ただ不確実性の増大などに対応するため年内に最大0.5%ポイントの利下げが実施される可能性があることを示唆した。ブラード総裁は低インフレや成長見通しを巡る不透明感を理由に利下げを主張し、政策決定に反対した。[nL4N23Q3NR]

ナショナル・セキュリティーズのチーフ市場ストラテジスト、アート・ホーガン氏は、パウエル議長が金融政策は短期的な政治圧力に屈しないと警告したうえに、ブラード総裁が50bpの利下げは行き過ぎと発言し、「ワンツーパンチを食らった」と指摘。「6月のFOMCが非常にハト派的だったため、誰もが7月の会合(での利下げ)は確実と感じたが、そうではないことが分かった」と話した。

リッチモンド地区連銀のバーキン総裁は25日、米経済にはリセッション(景気後退)のリスクがあるとの見方を示す一方、年内に利下げが必要になるかとの問いには「分からない」と答えた。[nT9N20N011]

25日の米国株式市場はパウエル議長の発言を受けて下落。米国債利回りは小幅上昇し、主要通貨バスケットに対するドル指数<.DXY>も一時上昇した。

市場は依然として7月の利下げを見込んでいるもようだが、50bp利下げの予想は後退した。[nL4N23W3SC]

<強まる圧力>

こうした中、トランプ大統領はパウエル議長へのいら立ちを強めている。

米政府高官は25日、トランプ大統領はドルが強過ぎ、ユーロは弱過ぎると考えており、FRBが利下げに動けばこうした状況は解消される可能性があると考えていると語った。[nL4N23W3NJ]

高官はまた、ホワイトハウス内ではトランプ大統領と異なる見解を持つスタッフもおり、パウエルFRB議長を降格する計画はないと語った。

パウエル議長はこの日の講演で「議会は政策が短期的な政治利害に屈した場合、痛手を負うことを知っているからこそ、このようにFRBを隔離することを選択した。世界中の主要な民主主義国家ではどの中銀も同様の独立性を保持している」と述べた。

その上で「われわれは人間であり、間違えることもある。頻繁ではないことを願うが、間違いを犯すものだ。しかし、高潔さや品位の面で誤ることはない」と語った。

*内容を追加しました。