新着Pick
519Picks
Pick に失敗しました

人気 Picker
うちの上海オフィスにいる清華大学出身で博士課程修了しているコンサルは、私が取ってきたプロジェクトに対して、「社会的に意義がある、人のためになる」と納得できないとプロジェクトを開始してくれません。笑

爆買い系旅行者や、ニュースや固定観念から持っているイメージのように、「したたかで自分のことしか考えてない」タイプの方々が大多数として存在しているのは確かです。

しかしヒエラルキーの上にいる数パーセントは、とにかく社会貢献や意義を強く求め、ノブレスオブリージュを絵に描いたような高潔な人々ばかりだったりします。私がトップレベルの方と会うと、みんな「この酷い状況にある母国中国を、何とかより良くしたい」と本気で考えていて、いつもため息が出るほどの高潔さに舌を巻いてしまいます。

NIOの創設者ウィリアム・リー・ビンも、アメリカから戻ってきて中国の真っ白な空を見て憤り、「電気自動車で北京の空を青くしてやる」と誓い、"Blue Sky Coming = 蔚来”と名付けた話も有名。

多産多死をやってる人たちが、めちゃくちゃ優秀で、かつ志や社会貢献意識まで高い、ということは、理解しておきたい環境です。

ちなみに一方で、95年以降や、00年以降に生まれた人たちは、「この大きな国を自分にはどうにもできない」と現実的に考えがちで、自分の生活の豊かさを重視するようになってるというデータもあったりします。
清華大学のキャンパスの南側に、キラキラした高層ビルが4棟そびえ立っています。この巨大なオフィスビル群のような場所が、実は合計1500社という数のベンチャーが入居している、「清華大学サイエンスパーク」のインキュベーション施設なわけです。

ひとつの大学が、800もの事業会社をぶらさげて、3.8兆円もの資産を保有している企業体を運営しているということが、まず大きな驚きでした。もともとは中国の大学が、その運用資金をみずから得るために設立することが多かった大学企業。しかし清華大学のそれは、2000年以降にファンドやインキュベーターといった機能を拡張して、いまやベンチャーの揺りかごになっていました。

このサイエンスパークに入居しているベンチャーを、ぐるぐる取材するだけで、数日間がかかる気がするほど広大なエリアです。
取材、執筆を担当しました。

中国のベンチャー育成システムは「多産多死」と言われています。確かに起業家、コワーキングスペース、ベンチャーキャピタル、ついでに政府の補助金の種類まで、その圧倒的な物量には驚かされます。

日中を比べると、ついつい力VS技という見立てをしてしまいそうになるのですが、なにもテクニックがあるのは小兵力士だけではありません。巨漢力士もまた自らの重量を発揮するための技術があるように、中国もその物量を生かすための工夫を持っています。

特に中国トップの大学である清華大学では、起業家を増やす「多産」、ベンチャーの死亡率を下げる「多死」対策の双方で、取り組みが充実しています。起業家教育からIPOまで、一貫して面倒を見る清華メソッドを追いました。
一言で言えば、教育に戦略性があるということだと思います。この記事の多産多死という言葉を聞いた時に、日本人の教育観では多死が出ることのリスクに目が向かいがちですが、大事なのは多産の部分でしょう。
目的が明確で、その目的に基づいて教育施策が選ばれている。だからIT分野での起業も多産されるわけです。中国は人口が多いとは言え、戦略的な教育がなければ、今のような経済発展はなかったはずです。

各地の行政関係者と話すと思いますが、日本の教育は今ある制度や人材を起点に考えられすぎです。結果として目的を見失い、手段の運用が目的化しています。

そして、もう一つ、教育のリターンを見くびっています。IT分野であれば、2,3年でわかりやすいリターンが出ることもあるし、5年,10年で見れば顕著な違いが出ます。だけど、20年しないと教育の効果はわからないし、そもそも効果があるかもわからないと思い込んでる。でも、それは違いを生み出せていない教育が悪いからであり、その主因は戦略性の無さなわけです。そんな教育に日本人は慣れきってしまってる。これが一番の問題です。
誰にも刺さらないコメントを何度も書きますが、清華大学の偏差値もすごいけど東大トップの偏差値もすごいわけです。

東大ほど偏差値に幅がある大学もなく、概ね偏差値65~90くらいが一つの大学にまとめられてしまってるので、「一応、東大生です」という言葉が嫌味にもなれば謙遜にもなるのだと思います。

そして、超優秀な頭脳たちが半自動的に理三に流し込まれて、本当になりたいかどうかわからない医者を目指すという不思議な構造がいまだにあります。

「医者より起業家の方が頭がよいし稼げるし社会性もある」と言ってしまうとやや過激ですが、これくらい振り切った価値観がそろそろ高校生にも伝わって、大学でなにをするかの選択肢に影響を与えるタイミングが来ているのかなと感じます。学生起業を推奨しているわけではなく、あくまで価値観の浸透という文脈で。
大学は教育の場、と考えていましたが、それに加え、企業育成の場でもあることに驚きました。大学がベンチャーキャピタルとしてスタートアップの育成と調達を支援している。

「我々が投資した企業は70%が次の調達ラウンドに進んでいる。テクノロジーを持っている企業のみに投資し、手厚くサポートした結果です」というコメントには驚きました。

「清華大学では年間1万件の技術的成果が生まれるが、その99%は産業化に失敗する。この比率を98%に引き下げることが目標」とか。わずか1%引き上げるだけですが、100件の差は大きい。
“清華大学では年間1万件の技術的成果が生まれます。ただし、その99%は産業化に失敗します。この比率を98%に引き下げることが私たちの使命です。”

この割り切りは正しい。スタートアップは「成功しない」という前提で、創業し、投資するのが正しいスタンスです。サイエンスの最先端もそうだと思います。

失敗したら、次に進みましょう。スタートアップも個人も。Let’s move on.
たまたま、米倉誠一郎先生(一橋大名誉教授)の『イノベーターたちの日本史』を読んでいたのですが、ここに出て来る理化学研究所―理研コンツェルンに近いモデルなのかもしれないな、と。
https://www.amazon.co.jp/dp/B071NF6MXM/ref=dp-kindle-redirect?_encoding=UTF8&btkr=1

東大でも起業家教育やインキュベーション施設の整備、また、UTEC(東京大学エッジキャピタル)の長年の貢献もあって、大学発ベンチャーが増えてきていますが、さすがに子会社として抱えて、そのリターンを直接的に享受することは大学自体ではできないので、おのずと資金循環やエコシステムの拡大スピードには差が出てしまいます。

ただ、かつての理研の話などを見ると、日本だからできない、なんてことは無くて、要は大学や研究機関に何を求めるのか、という話なのかもしれません。大学は教育機関で、公的資金も入れているのだから、リスクを取って大赤字を出してもらっては困る、という前提の仕組みは、もはや前提(十分な公的資金の投入)が成り立っていません。
多産多死のベンチャー育成の本当の意義は、ベンチャー企業そのものが成長したり倒産したり、といった会社単位で捉えることではないでしょう。

大切なことは、その過程を通して倒産したベンチャーを経験した人材が次のベンチャーを立ち上げたり、他のベンチャーに移ったり、社会全体として経験者の流動性が上がることです。つまり最も大切なことは、社会全体として人材の質が上がることだと思います。

例え倒産したベンチャーだとしても、稀有な経験をしたシリアルアントレプレナーが量産されているので、そこから次のユニコーンが誕生する確率が上がってくるのではないでしょうか。

社会構造、文化や全体の教育レベル等が異なるので、日本と中国の人口規模を比較してもあまり意味がないのでは。まずは今の現状の日本として、より活発な多産多死が起きるよう社会全体でサポートして頂きたいですね。日本には日本にしかない強みがあると思います。世界がものすごいスピードで変化しているこの時に、自分自身への自戒も込めて、待った無しで動いていきたいと思います。
清華大学の起業支援の様々なプログラムやサポートは中国でもとても評判が高いです。一方で、全般的に新卒や大学生の起業の応援・バックアップは、国策として全国津々浦々で実施されています。その背景としては、人口増によるホワイトカラーの就職先の受け皿の少なさによる就職難。大学のベンチャー起業支援と一口で言っても、清華大学といった上澄みはとても華やかな一方、このような背に代えられない切実な事情もあったりするのです。
この連載について
世界最大のテクノロジー大国になろうとする中国。その牽引役となっている「トップ1%」の頭脳集団に迫るため、NewsPicksのドキュメンタリー制作班は北京に飛んだ。14億人の頭脳ヒエラルキーの頂点に君臨する、清華大学とそのエコシステム、最先端のサービスを描き出す。