給与デジタル払い、銀行が警戒 IT企業は利便性主張
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給与振込は、銀行にとって個人の流動性を確保してプールさせ、低金利の資金を調達する源泉となってきた。
もともと現金のみだった給与支払に振込みを持ち込んだのは銀行のイノベーションだったと思う。給与振込によって銀行は取引先法人とのリレーションシップを強化し、かつ振込先の個人口座を獲得し、固定化することに成功した。おそらく給与支払のために銀行が職場に現金を持ち込んだり、数えて分ける手間もなくなっただろう。
しかし、デジタル化が進む中で非金融企業が提供する数多くの資金プール(ウォレット)ができて、銀行口座よりそちらからの資金移動や決済を行う方が便利で容易になってきている。ならば消費者がその資金プールに給与を直接入れたいと思うのは自然ななりゆきだ。
極端なシナリオとしては、給与振込を受けたウォレットから、クレジットカードや住宅ローンの支払分だけが銀行口座に「チャージされる」という事態が想定できる。
一方で銀行は、多種多様な自動引落しを口座にひも付けられるようにしているため、それを利用している消費者が皆、一挙にウォレットへの給与入金に動くことはないとみられる。しかしそうしたひも付けが少なく、かつ利便性に敏感でデジタルネイティブな消費者から、移行が進み始めるいうシナリオは現実的だろう。
銀行にとってはリテール取引における基幹部分を失いかねないという懸念があるだろう。政治的なかけ引きでその実現を遅らせることはできても、既に汎用性の高い資金プールが銀行口座ではなくなりつつある現状を覆すことはできない。それはデジタル化の潮流の中にあるからだ。
銀行にとってリテール領域で新たなイノベーションが必要な時期に差し掛かったということだと考える。給与の銀行振込独占が崩れると、住宅ローン、カードローンの延滞が増え、個人ローンの延滞が大幅に増えることになるでしょう。特に住宅ローンは返済額が大きく、給与振込日に優先的引き落としをセットすることで延滞率を下げてきたという裏事情もあります。これは、ボディブロー的に銀行を苦しめることになるかもしれません。
今の銀行では、引出しも振込も手数料がかかる。預金しても金利は微々たるモノ。デジタルになるとメリットが多いなら当然多くの人は利用するだろう。環境の変化に対応できない銀行はヤバイね。