優れたリーダーは周囲をポジティブに鼓舞する

ビジネスもスポーツも、どんな世界でも、成功は持って生まれた能力や知性だけで達成できるものではない。カギを握るのは、成長や向上を意識する「しなやかマインドセット(growth mindset)」だ。
しなやかマインドセットの持ち主は、つねに昨日より少し向上する方法を探している。リスクを恐れず、自分が求める結果を得るための努力をいとわない。
優れたビジネスリーダーの多くは、しなやかマインドを自然と身に着け、粘り強さや勤勉さといった資質を持ち、向上する方法を見つけられるという信念が力強い原動力になることを知っている。
ただし、企業や組織が成功するためには、リーダーとして、しなやかマインドセットをチームのメンバーにも注入しなければならない。
他人を鼓舞することは決して簡単ではない。とくに、自分の才能のレベルやアウトプットは変えようがないと思い込んでいる人、すなわち「硬直マインドセット(fixed mindset)」の人は手強いだろう。
とはいえ、決して不可能ではない。

1. リーダーは自分の立場に固執しない

自分はしなやかマインドセットだと思っている人も、他人との接し方次第で、無意識のうちに硬直マインドセットの職場をつくりだしているかもしれない。
『マインドセット 「やればできる!」の研究』の著者、キャロル・ドゥエックは、マネジャーはチームをどのように率いるかについて、重要なポイントを自問する必要があると書いている。
「職場で周囲とどのように接しているか」「部下の幸せより自分の権力を気にする、硬直マインドセットの上司になっていないか」「他人をおとしめることによって、自分の立場を確認していないか」「部下の活躍が自分を脅かすという理由で、彼らの高いパフォーマンスを邪魔していないか」
しなやかマインドセットが目指すのは、みながともに学び、より大きな成果をともに達成できるように促すことだ。
すべての知識や称賛を、リーダーが独り占めしてはいけない。自分の強いイメージを守ることに固執する権威的な上司であるより、部下の学びの源となり、コーチとして導く存在でいよう。

2. チームに勇気を注入して促進する

心理学者のアブラハム・マズローは、「私たちは毎日、勇気をふるって成長に足を踏み入れることもできれば、安全地帯に退くこともできる」と言った。
ここで重要なのは「勇気」だ。不安の中でも一歩を踏み出して何かをしようと思わなければ、しなやかマインドセットを持つことはほぼ不可能だ。その意志を引き出すように、リーダーとして手助けしよう。
『Actualized Leadership(自己実現するリーダーシップ)』の著者ウィル・スパークスは、私が配信しているポッドキャスト「The Follow My Lead」に出演したとき、リーダーとして心がけていることについて次のように語った。
「成長へと踏み出すかどうかを決めるのは、本人だ。彼らに強いることはできないが、助言して励ますことはできる」
部下が勇気を持つように促すことは簡単ではないが、彼らの立場になって、まず彼らがどのような状況にいるのかを理解しよう。共感を示し、勇気を出さなかった場合のコストを彼らが理解できるように、できるかぎり手助けしよう。

3. 個人の成長を応援する

部下にとって最善の利益を心から願うなら、会社の成長だけを追求するわけにはいかない。彼らが自分で学ぼうと思うように、積極的に応援することだ。
「健全な目標は、つねにしなやかマインドセットを後押しする」と、PVケースのデービッド・トレイナビシアス創業者兼CEOはメールで取材に応えた。
「部署や会社としての目標に加えて、チームのメンバーがそれぞれ個人の目標を設定するように励ます。それぞれが個人の成長に取り組むように後押しして、必要なスキルを伸ばす機会を与えれば、結果的に大きな見返りを得られる」
しなやかマインドセットを育てるためのトレイナビシアスの取り組みは、世界的な競争が厳しい分野で、会社に驚異的な成果をもたらす一因になっている。社員の努力のおかげで、欧米とオーストラリアで100件以上の太陽光発電システム設計チームが、PVケースが開発したソフトウエアを使っている。
メンバーが個人的に成長すれば、彼らは新しいスキルを身に着け、会社にもたらす成果も伸びるだろう。
私は自分の会社、ラーンロフト(LearnLoft)のスタッフに、組織の健全性に関する重要なテーマについて、ポッドキャストで番組配信を始めてみるようにすすめた。この取り組みによって、彼らは番組を配信するために、個人の成長に向けて積極的に努力した。

4. 組織内から抜擢する

リーダーとしてしなやかマインドセットを伸ばすための取り組みが、口先だけではないことを証明しなければならない。
グローバル・タレント・モニターによる労働人口の動向調査(2018年)では、退職者の40%が「将来のキャリアアップが望めないこと」を主な理由に挙げている。
経営陣は、自分たちの行動に──とくに雇用慣行に──キャリアアップとしなやかマインドセットに対する会社の姿勢を反映させなければならない。新しいポストができたら、まず組織内の人材を検討したい。
しなやかマインドセットを身に着けるように手助けすることは、つねに簡単にはいかない。しかし、リーダーがそのように努力すれば、チームの長期的な成果を大きく変えることもできる。
組織内の人々がしなやかマインドセットを実践するように促すことによって、会社や組織に有意義な貢献をもたらす仕事ができるようになるだろう。
原文はこちら(英語)。
(執筆:John Eades/Author, podcaster, and CEO of LearnLoft、翻訳:矢羽野薫、写真:Cecilie_Arcurs/iStock)
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This article was translated and edited by NewsPicks in conjunction with IBM.