【切迫】観光都市が悲鳴。「オーバーツーリズム」の処方箋

2019/6/18

20段階で「混雑度」を表示

洪水で広場や道路が水没することが多いヴェネツィアでは、冠水した地域を避けることができるように、市当局がホームページで水位情報を提供している。
だがヴェネツィアに押し寄せるのは水だけではない。市当局は最近、別のものに関する警戒情報も提供している。観光客だ。
観光客情報に使われるのは、男性用トイレを示すマークによく似た棒のような人形のイラストだ。混雑度は人形の数によって表され、1から20まで段階がある。
筆者がヴェネツィアにいた4月のある日の混雑度は15で、指数としてはそこまでひどくはなかった。それでも街は人でごった返し、不快で、蒸し暑かった。新鮮な空気を思い切り吸いたくなった筆者は、電車で町を脱出することにした。向かう先はトレヴィーゾだ。
トレヴィーゾだって? この町の名前を聞いたことがある人でも、なぜトレヴィーゾに?と思うだろう。
正気の人間なら、宝物のような建築や芸術がひしめく魅惑の迷宮・ヴェネツィアをさっさと見捨て、トレヴィーゾなどという地味な町に乗り換えることなど考えられない。
名物といえば赤チコリにベネトンの色鮮やかなセーター、そして上半身裸の女性の像の両乳房から飲料水(祝日にはワイン)が流れ出すという「おっぱいの噴水」ぐらい。しかもこの像はオリジナルですらない。
観光客でごった返すヴェネツィア(Marco Secchi/Getty Images)

地元民にとって観光客は「災害」