【森岡康一】スタートアップは大企業を理解するべき

2019/6/15
6月11日の『The UPDATE』は「大企業×スタートアップ イノベーションは興せるか」。
Supershipホールディングス代表取締役社長CEOの森岡康一氏、ONE MEDIA CEO & Founderの明石ガクト氏、Plug and Play Japan 代表理事の藤本あゆみ氏、アルファドライブ代表取締役社長でNewsPicks執行役員の麻生要一氏、計4名をゲストに迎え、大企業とスタートアップの関係性や、これからについて議論した。
視聴はこちら(タップで動画ルームに遷移します)。
番組の最後に、古坂大魔王が最も優れていた発言として選ぶ「King of Comment」は、森岡氏の「…老婆心ながら…」に決定。
これは、大企業がスタートアップに対して、さまざまなアドバイスをすることを例にした場面での発言だ。
森岡氏自身は、大企業とスタートアップが手を組むことが、最短最速のイノベーションを起こすという「ハイブリッドスタートアップ」を唱えている。
番組終了後、森岡氏に話を伺った。

大企業はお金の使い方を知っている

番組では、大企業とスタートアップのお互いの理解度が足りていない、という課題が挙げられていた。これについて、森岡氏は現状をどう考えているか。
森岡 大企業は優秀な人ばかりがくるけど、スタートアップは優秀な人をとるのが大変、まず環境としてそういった差があります。
それを理解せずに、大企業はつい彼らの常識を当てはめて、スタートアップに対して要求をしがちなところがありますね。
たとえば、スタートアップって大企業と比べて離職率が高い場合が多いですが、彼らに対して当然のように「もっと環境をよくして、離職率を下げるべきだ」とか言ってしまう。
スタートアップ側からしてみれば「そんな余裕あったらやってるよ」という感じなんです。
余裕があれば「できること」はありますが、給料も時間も、大企業とスタートアップではまるで違うわけです。
大企業に勤めている人の「優秀さ」を、無意識のうちに、スタートアップに押しつけがちだ、と語る。
番組内では「そもそも、大企業に勤めている人が優秀なのか」という点も議題に上がっていた。
森岡 その話でいうと、もともとは全員優秀です。大企業は採用の時点で「上澄み」をとっているわけですから、社員の地頭が違います。
ただ、その後の組織による染まり方などは人によって違うので、個人差は出てくるでしょう。寝ている人だっているかもしれない。
でも、全員がダメってことはないですよ。全員ダメだったら会社潰れてますから。むしろ、優秀な人はけっこうな割合でいると感じています。
大企業社員の「優秀さ」については、麻生氏から「責任感がある。だからこそ社会の根深い課題などを見つけることにもつながる」という発言があった。
森岡氏は、大企業の社員の優秀さは、どのような点に感じるか。
森岡 お金の使い方を知っているところですね。規模の大きいお金の使い方を知っている。
スタートアップって、コストを下げようとするから、安く仕上げようとすることが多いんです。
大企業は、いいものを届けることを目的にすえて、たとえ高くてもちゃんとお金を払うということを知っている。
長期的に見て、安定的で事故の起きないものを買って信頼を得る、という風に考える。
安かろう悪かろうを選択しないんですね。この差はかなり大きいと思います。

大企業がスタートアップを理解するには

資金面で余裕があり、大きな規模のお金の使い方を知っている大企業。
だからこそ、スタートアップは彼らと手を組むことで、自らの不足している部分を補いながら最短最速のイノベーションを目指すことができる。
しかし、手を組む上では「ビジョン」も重要だ。このビジョンマッチングはどのように見極めていけばいいか
森岡 まずはちゃんと向き合って、お互いが何を目指しているのか、をすり合わせないといけないですね。
ただ、大企業がお金を出すには、その企業の戦略上に乗っている方が使いやすいわけです。
だから、彼らがどんなモチベーションをもって、業務にあたっているのか、という点をスタートアップ側がきちんと理解することが絶対に必要です。
大企業がどこに向かおうとしているのか、ということに関して、勉強不足のスタートアップほど「大企業のやつはわかっていない」って言いがちなんですよ。
大企業は大企業で、自分たちの目指す方向に全力で向かっているわけで…。
まずは大企業のビジョンを理解した上で、スタートアップは手を組むべきだと語る。
スタートアップ自身の「ビジョン」を完全に通すことは、一旦は諦めるべきか。
森岡 まずは、スタートアップ側が大企業に寄り添えそうな部分を見つけて、そこで共創するんです。
そうすることで認めてもらえるし、信頼してくれるし、もっとお金を出してもらえるようになるかもしれない。その上で、自分たちの個を出していけばいいんですよ。
スタートアップは大企業に対して、企業方針を見極めることで理解を深めていくことはできる。
では、大企業側がスタートアップを理解するにはどうすればいいのだろうか。
森岡 これは番組内で藤本さんもおっしゃっていましたが、スタートアップに出向して、環境にどっぷり浸かるべきですね。
「自分たちが思っているような環境じゃないぞ、ここは」ということを知るべきではないでしょうか。
スタートアップは常に戦場ですから。そこの環境を知って、自分が温室にいることを理解する。どういう族種の人たちがいるのか肌で感じた方がいいですね。
それを知る以外に理解する方法はないと思います。理屈では絶対に理解できない。

次回は「新時代の移動サービス 」

ユーザーのニーズに応じて、公共交通機関から自動車やタクシー、さらには自転車の共有まで、様々な交通手段で利用者をサポートする「移動サービス」が、世界で急速に普及し始めています。
海外の都市では、ライドシェア大手Uberが、空飛ぶタクシー「Uber Air」のシェアサービスの導入を計画するなど、すでに様々なスタイルのモビリティ革命が進んでいます。
どうすれば日本で、新たな移動サービスが普及するのか。また、自動運転やシェアリングが普及した未来において、どういう形の移動手段が便利なのか、徹底討論します。
NewsPicksアカデミア会員の皆様は、下記より番組観覧にお申し込み頂けます。(先着40名)
番組観覧のお申し込みはこちらから。
<執筆:富田七、編集:木嵜綾奈、デザイン:斉藤我空>