Samuel Shen and Josh Horwitz

[上海 11日 ロイター] - 中国の上海証券取引所が間もなく開設するハイテク新興企業向け市場「科創板」には、上場申請を希望する企業や設立承認を求めるファンドが列を成している。

トランプ米政権による華為技術(ファーウェイ)製品排除による米中貿易摩擦激化で愛国主義が盛り上がり、科創板への支持が高まっているためだ。

上場を申請した企業は受け付け開始から2カ月で半導体や人工知能(AI)、バイオ技術などの産業を中心に120社に達し、調達目標額は計160億ドルとなった。これに対してリフィニティブのデータに基づくと、他の取引所の昨年の新規株式公開(IPO)を通じた調達額は上海証取が117億ドル、深セン証取が80億ドルだった。

投資家側でもハイテク向けミューチュアルファンドの設立ラッシュが起きており、中国証券監督管理委員会(CSRC)のデータによるとこれまでに約100本のファンドが設立承認を申請した。5月末以降に立ち上げられた、科創板の上場銘柄を対象とする調達上限10億元(1億4500万ドル)のファンドは12本に上る。

科創板は昨年11月に習近平国家主席が突如構想を発表した。中国本土の取引所が運営する市場としては初めて黒字化を上場要件としておらず、中国政府が半導体など中核技術の自給態勢構築を目指して打ち出したと受け止められている。

中国政府は4年前に「中国製造2025」を戦略目標に掲げるなど技術の国産化を進めているが、米中貿易摩擦やその影響拡大への懸念から、こうした取り組みは緊急性が増している。

上海証取・資本市場学院の趙争平理事長は先月の会合で「米中摩擦はもはや、単に中国が大豆の輸入を増やしたり貿易赤字を減らすだけの話ではない。本質的には産業のサプライチェーンや中核技術を巡る主導権争いだ」と指摘。科創板を成功させるためにスタッフが昼夜を分かたずに作業を続けていると付け加えた。

米政府が5月に許可なくファーウェイと取引することを禁止したことで、ハイテク分野における中国の実力不足が露わになり、愛国的な熱気が科創板に集まった。

国泰基金のゼネラルマネジャー、Zhou Xiangyong氏は、科創板が国際的に競争力を持つ技術を育てることができれば、「トランプ政権はもはや中国を押さえつけられないだろう」と述べた。

Vインベストのパン・ジャン最高経営責任者(CEO)も「中国は海外からの圧力をてこに国内の取り組みを推進するべきだ」と語った。

科創板は赤字企業の上場を容認しているほか、IPOの価格設定やタイミングについて当局からの強い指導を受けず、一部の市場関係者からは中国においてこれまでで最も大胆な改革とも言われる。正式な立ち上げ時期はまだ発表されていないが、投資銀行筋によると今月末か7月初めに開設の見通しだ。

ハイテク企業の時価総額が市場全体に占める比率は、米S&P総合500種構成銘柄が30%近いのに対して中国のCSI指数では11%程度にとどまっている。黒字化など厳しい上場要件などが原因だ。

データ関連の新興企業、ハイパーS・データ・テクノロジーのユアン・グォウェイCEOは「米企業は経営が赤字なのに事業拡大を続けている。中国では上場を目指せば事業拡大と黒字化のバランスを取るのが難しく、これまではそれができなかった」と述べた。