【謀略】法律は役立たず。採用の「年齢差別」をめぐる死闘

2019/6/15

5割の労働者が定年前に失業

巨大企業も家族経営の小さな会社も悩みは同じ——人手不足だ。失業率が半世紀ぶりの低水準となり、求職者に関心を持ってもらうだけでもひと苦労だと経営者は口を揃える。
しかしそんな売り手市場の一角に、「年齢差別」が暗い影を落としている。資格も経験も十分なのに、年齢が50歳(ときには40歳)を超えているだけで、何社受けても就職できない求職者が無数にいるのだ。
多数の企業がフェイスブック、リンクトインなどSNSを利用した人材募集で中高年を門前払いしていることが発覚したのをきっかけに、年齢差別の問題に注目が集まった。訴訟も相次いで起きている。
1967年に「雇用における年齢差別禁止法(ADEA)」が成立して以来、アメリカでは40歳以上の労働者を年齢で差別する行為が禁じられている(訳注:アメリカでは履歴書にも年齢を記載しない)。
とはいえ、年齢差別を法廷で立証するのは難しい。シカゴとアトランタでは、裁判所が立て続けにADEAの適用を制限する裁定を下し、求職者が法廷で勝てる見込みはますます薄くなった。
そうでなくとも50歳以上の労働者(全米でおよそ5400万人)は、いまだにリーマンショックの余波を引きずり、厳しい経済状況に直面している。
シンクタンクの「アーバン・インスティテュート」と非営利の報道組織「プロパブリカ」が共同で行った調査によれば、50歳以上の労働者の実に半数以上が老後の準備が整う前に定職を失っている。その9割は、以前の生活水準を二度と取り戻せないという。
50歳以上の求職者を対象とした相談会に集う人々(Andrea Morales for The New York Times)

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