(ブルームバーグ): 野村ホールディングスが24日に開催する定時株主総会に関連し、議決権行使助言会社の米インスティテューショナル・シェアホルダー・サービシーズ(ISS)は、永井浩二最高経営責任者(CEO)の取締役再任に反対すべきだと投資家に助言した。情報漏えい問題で金融庁から行政処分を受けた責任を取るべきだとしている。

ISSは顧客向けリポートで、永井CEO再任に反対する理由として「ここ10年間で情報漏えいによって金融庁に2度にわたる行政処分を受けた責任を取るべきだ」と指摘した。

野村HDは10人の取締役の選任を提案しているが、ISSは永井CEOに加えて、古賀信行取締役会長、社外取締役の園マリ氏の3人の再任に反対している。

古賀氏への再任反対理由としては、永井氏と同様の理由のほか、指名委員会委員長、報酬委員会委員長としてガバナンス改革失敗の責任を挙げている。古賀氏は野村HD社長などを経て2011年6月に取締役会長に就任。12年の増資インサイダー問題が起きた当時も取締役会長だった。

園氏については、野村HDの会計監査人である新日本監査法人(現EY新日本監査法人)出身であることから独立役員の要件を満たしていないとした。野村HDは株主総会招集通知で「同監査法人を退所後すでに7年弱が経過しており、退所後は同監査法人の運営には一切関与していない」などと説明している。

ISSはまた、ガバナンス上の懸念として会社提案の取締役候補にコンプライアンス(法令順守)を専門とする新たな独立社外取締役候補を任命していないことを挙げる。野村HDが今回の問題を受け、もし真摯(しんし)にガバナンス改革を望むのであればこうした候補者を定時総会後に臨時総会を開催するか、20年の定時総会で任命すると公表することもできたとしている。

さらに、社内出身の取締役である古賀氏が指名委員会と報酬委員会の委員長を兼任していることも問題だと指摘。委員会の独立性改善や取締役構成の点で目立った変化が見られなかったことから、情報漏えいによるコンプライアンス上の懸念があるにもかかわらず、野村HDが今回の総会を「平時の総会」として運営している印象を持つとの見方を示した

米助言会社グラス・ルイスも顧客向けのリポートで、より独立性を持った取締役が指名委員会と報酬委員会の委員長を務めるべきだとして、古賀取締役会長の再任に反対を推奨した。

ISSなどによる反対推奨について、野村HDの広報担当者はコメントを控えた。

金融庁は先月28日、野村HDと傘下の野村証券に対して、東京証券取引所の株式市場再編に関する情報を不適切な方法で漏えいしたとして業務改善命令を出した。会見した金融庁幹部は、インサイダー取引には当たらないが、それに引けを取らず市場の公正性にとって重大な問題行為だと指摘。12年の増資インサイダー問題以来、法令順守の意識がいまだ浸透していないと厳しく指弾していた。

行政処分に先立ち、野村HDはこの問題に対する社内調査の結果を会見で公表。経営責任として永井CEOは月額報酬の3割を3カ月間返上することを決めたものの、CEOを辞任する考えはないと述べていた。同氏は12年8月、増資インサイダー問題で経営トップが引責辞任したことを受けて就任。7年2カ月間トップを務めた田淵節也氏以来の長期政権となっている。

(8、9段落に米グラス・ルイスに関する記述などを追加して記事を更新します.)

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