【独白】カリスマに選ばれし男。「孤独と重圧」の全てを話そう

2019/6/14
創業者の後を継ぐのは、難しい。それが永守重信のようなカリスマなら、なおさらである。
永守はここ10年、日本電産の後継者を探してきた。数人の候補が浮上しては消えていき、最終的に社長に選ばれたのが吉本浩之だ。
吉本は2015年、日産自動車から日本電産へ転じた人物。伸び悩んでいた日本電産の子会社、自動車部品や精密機器を手がけるトーソクの社長として経営を立て直し、日本電産では車載事業本部長を務めた後、2018年6月に社長に就任した。
日本電産は、有価証券報告書に「永守への依存に係るリスク」が明記されるほど、永守の経営手腕に頼ってきた会社だ。つい先月もトランプ大統領と面会するなど、世界の国家元首たちと直接交流しているのが永守という男である。
吉本は、その永守体制をどのように継いでいくつもりなのか。
初めて明かされる「孤独と重圧」。今の心境を含めた、吉本の貴重なロングインタビューをお届けする。
吉本浩之(よしもと・ひろゆき)日本電産 代表取締役社長兼COO
日商岩井(現・双日)、カルソニックカンセイ、日産自動車を経て、2015年に日本電産に入社。子会社トーソクの社長を務めたのち、車載事業本部長を経て、2018年6月より現職。

カリスマの後を継ぐということ

──永守会長から社長の座を譲り受けて、ちょうど1年がたちました。
吉本 社長というのは、やってみないとわからないですね。副社長のときとは全く違う景色だし、責任も重い。
社長は孤独です。「こうなったらどうしよう」という不安感が、常に頭の中をいくつもよぎるものですから、落ち着く暇もない。寝ていても、本当にぐっすり眠れているのか。常に何かが気になって仕方がない。ずっと走り続けているような1年間でした。
──今、何が一番不安ですか。