【ドキュメント】日本電産、「EV界のインテル」を目指す

2019/6/10
「私は、ガソリン車には興味はない」
京都駅からタクシーで南下すること、約20分。突如、視界を覆う高層ビルの最上階20階を、中国の自動車メーカーのトップが続々と訪れている。
彼らのお目当ては、永守重信。日本電産の会長だ。
日本電産を創業した永守重信(写真:Bloomberg via Getty Images)

中国メーカーの「永守詣で」

日本電産といえば、永守が一代で築き上げた世界一のモーターメーカーだ。パソコンなどに搭載するHDD(ハードディスク駆動装置)向けモーターでは世界シェア85%を占めるなど、小型モーターを中心に世界を制覇してきた。
その日本電産に、なぜ中国の自動車メーカーたちが「永守詣で」をするのか。
それは、日本電産が新たに「車」の心臓部を担う製品を開発したからだ。自動車業界に、EV(電気自動車)という大波が押し寄せるなか、モーターは自動車のコアパーツとなる。
特に、ガソリン車のエンジンに当たる「駆動モーターシステム」は、その構造変化の最も大きな象徴だ。
日本電産が開発した駆動モーターシステム「E-Axle」
特に中国は、今や世界のEV市場を引っ張る存在だ。EVスタートアップも続々と登場する。
「永守はどこまでこの事業に本気なのか」
自動車業界はまだまだ既存メーカーが強く、EV駆動モーターを制する存在は登場していない。その市場を押さえる力を電産が持っているのなら、ぜひ一緒にやりたい。
中国メーカー幹部たちは、永守と数時間話しこむと、記念に写真を撮り、中国へと帰っていく。そのタフな交渉力で知られる永守との直接交渉があると、大型の受注が決まるというケースが多いという。

時は戦国、トップが戦場へゆけ